第24章 びゐどろの獣✔
祭事ということもあって、露店もちらほらと見受けられた。
手頃な店で甘い飲み物を買い、腹ごなしとばかりに塩気の効いたものを食べ、疲れた身体を満たす。
「千くん、だんご汁もあるよ。食べる?」
「ふ、はふ…はいっ頂きます」
「うまい! うまい!! うまい!!」
「煉獄お前、何処でもその食い方してんのなァ…」
「美味いものを美味いと言ってはいけないか?」
「別に、そこは否定しねェけどよ」
外に並べられた食席で、あちこちの露店で買った摘まめる料理に舌鼓を打つ。
串カツを頬張る千寿郎にお汁もどうぞと差し出したり、大量の皿を空にしていく杏寿郎の腹が膨れるまで追加注文をしたり。
甲斐甲斐しく世話する蛍は、まるで自分が料理を味わっているかのような笑顔だ。
こんなにも美味しそうに料理を味わう相手もそういないだろうと、蛍の様に納得はするがふと疑問も浮かぶ。
一人前の月見そばを食し終えた実弥は、喉を水で潤しながら浮かんだ疑問を口にした。
「そういやお前、」
「ん?」
「本部を出てからずっと煉獄と過ごしてんだろォ」
「それが?」
「その間、こいつからずっと血を貰ってんのか」
「ええっと……まぁ、そう、だけど…」
「いくら煉獄が血気盛んな奴でも、頻繁に流血させんのは問題じゃねェのかァ」
「それを言うなら不死川こそ、任務で稀血を使う度に流血しているだろう?」
「毎回じゃねェよ。ンなことしてたら肌なんて見えなくなるくらい傷だらけになるわ」
(確かに…)
言葉を濁す蛍に、助け船のつもりか杏寿郎が声を挟む。
それでも尤もだと思えてしまう実弥の返しに、蛍が口を噤んでいると。
「それなら問題ないと思います。兄上は血以外のものも、姉上に差し上げていますから」
「せ…っ」
「む。」
「血以外のものォ?」
邪(よこしま)な思いなど微塵もない笑顔で、千寿郎がさらりと言い切ってしまった。
彼なりの助け舟のつもりだったのかもしれない。
しかしその言葉に実弥の疑問は更に膨らんだ。
「血以外ってなんだ」
「なんでしょう…汗、とかかな…? 多分」
「汗ェ?」
「いや。うむ」