第22章 花いちもんめ✔
『ねえ、よしなよ。そんな罰当たりなこと…』
『でも本当に声が聞こえたんだって。此処から』
「あれ。お客さんかな」
「…ッ」
障子を貼った扉の向こうから届く、通りの明かり。
その明かりを背後に、扉の前に立つ人影が二つ。
お参りで足でも運びに来たのか、見知らぬ気配に蛍は体を硬直させた。
声からして男女二人組のようだ。
身を竦ませる蛍とは裏腹に、そうだと言わんばかりにぽんと手を打った童磨は不意に蛍の腕を引っ張り上げた。
「っ!?」
「蛍ちゃん、乗り気じゃないみたいだし。ならあの人間達に助けを求めればいいんじゃないかな?」
軽々と起こした蛍を障子の扉へと向けるようにして背後から抱くと、耳元で童磨は細く優しく囁いた。
「この状態なら、どこをどう見ても蛍ちゃんが被害者に見えるだろうし。ほら、助けてって言ってごらん」
「な…っん"ッ」
何を言っているのか、と。開いた声は途端にか細く震えた。
見計らうように、蛍を背面座位で抱いたまま童磨が腰を突き上げたのだ。
「ん、ぁ…っんん"っ」
「ほうら、声を抑えなくていいんだよ。この街じゃ頻繁に見る光景だ、相手も驚きはしないだろうさ」
力の入らない唇を噛み締めながら、頸を横に何度も振る。
それでも童磨は律動を止めることなく、背後から深々と蛍を犯し続けた。
「よく見てもらえばいい」
「! ゃ…ッ」
扉に向けて両脚を無理矢理に開かされ、繋がっているところをよく見えるように曝される。
稀血とは別のもので顔を真っ赤に染めると、蛍は童磨の腕を縋るように握りしめた。
好意のない相手に抱かれることよりも、こんな自分を他者に曝け出される方が余程怖い。
やめてと目で訴えても、にこにこと朗らかな笑顔で返されるだけだ。
『やっぱり気になるから、見るだけ』
『もう、知らないよ』
「ッ…! ん、く…っ」
カタンと引き戸に手をかける小さな音が、鮮明に聞こえた気がした。
自然と体は背後の童磨へと押し付けるように仰け反り、蛍は顔を引き攣らせた。