第22章 花いちもんめ✔
悪意で言っているようには聞こえない。
だからこそ尚の事、背筋は凍るのだ。
心の底からこのまぐわいを楽しんで、満たされている気でいる。
童磨の心は、蛍には理解できなかった。
それでも互いに共通しているのは、触れ合うことで生まれるものが快楽であるということ。
「はァ…っ蛍ちゃんの中、俺の全部を搾り取ろうとしてくる…っ」
「ん、はッあっ…! も…ッ」
「気をやる? いいよ、何度でも気持ちよくなって。俺に蛍ちゃんの果てる姿をもっと見せて」
「ぁあっん、くぅ…ッ!」
両手を握り床に押さえ付けられたまま、遠慮もなしに最奥まで何度も突き上げられる。
荒波に攫われるような感覚だった。
稀血の効果でいつも以上に熱を持つ体は、簡単に絶頂を迎えてしまう。
四肢に力が入り、ぶわりと強い熱が全身を走り抜ける。
反射で強く握り返した童磨の手は、既に爪を突き立てられた傷跡など綺麗に完治させていた。
「ん…っ凄い締め付け」
「はぁ…っ」
ふるりと身を震わすも、欲を吐き出すまでもなく。握り締めていた手を解放すると、荒い息を零す蛍の頭を童磨は優しく撫で上げた。
「大丈夫かい?」
「……ぃ…」
「ん?」
「…思って、も…ない…癖に…」
「酷いなあ。本当に心配しているんだよ?」
何度果てようとも、鮮やかな緋色の目は色褪せない。
絶望することも、虚無となることもない。
ただひたすらに己を見失わず睨み付けてくる眼孔に、童磨は治まらない笑みを浮かべ続けた。
「なんでわかってくれないかなあ。蛍ちゃんがそうやって突き放すから、俺も精一杯歩み寄ろうとしているのに」
「何、が…っ」
──カタン、
「!?」
「あ。」
力の入らない体で、それでも歯向かおうとした蛍を止めたのは、小さな小さな物音。
拝殿の唯一の出入口である両開きの扉から届いた物音に、童磨もはたと顔を上げた。