第17章 初任務《弐》
敢えて触れないようにしていたことを、こうもあっさり突き破ってくるとは。
子供の距離感の無さは時として暴力だ。
「すッすんまへん! 息子が大変なる粗相を! どうか子供の戯言とでも思うて頂ければ…!!」
「そうだ、落ち着け蛍。相手は無垢な子供で」
「心無い言葉に傷付いた女心がわからない人達はちょっと黙ってて下さい」
「す…ッ」
「む、むう」
しどろもどろな大の男二人は笑顔で一蹴。
相手が子供であればなんでも許されると思うなと言ってやりたい。
自分の顔が特に栄える訳でもないことなど、言われずともわかっているというのに。
鬼殺隊に身を置いてからというものの、お館様なるものは顔で隊士を選んでいるのか?と思う程美男美女を拝んできた。
柱ともなれば、皆一様に強烈な個性を持っている。
そんな彼らを前にすれば、凡人な自分など影が薄まるどころか影にもならず潰される。
持たざるものの気持ちは持たざるものにしかわからないというものだ。
「な、なんや。オレは嘘なんてついてへんぞ!」
「少年。それ以上私の心を抉らないでくれるかな」
それが悪いこととは思っていないが、こうもはっきりと悪態をつかれると良い気はしない。
「自分の思いをしかと主張できることは良いことだと思う。立派。偉い。凄い。」
にこにこと蛍の笑みが深まる。
満面の笑みを浮かべてはいるが、がっちりと少年の肩を捕まえたまま。
「だがしかし初対面の女性にそんな暴言吐く少年嫌いだなぁおねーさん」
「ひ…っ」
肌が触れ合いそうな程の至近距離で、にっこり笑顔で圧をかける。
それはもう、にっっっこりと。
鬼云々の前に蛍自身からかけられる威圧に、ぶるりと清の背筋が震えた。
「少年の将来の為にも忠告してあげよう。外見で女性を蔑むべからず。そんな器の小さい男に育つと損をするぞ」
「な…なん、や偉そうに…」
「そして!」
「わっ」
「確かに生まれ持った美しさに勝てるものはない。けれど覚えておきなさい」
ようやく両肩の束縛が離れる。
至近距離で圧していた顔を離すと、蛍はとんと指先で少年の額に触れた。
「可愛いも綺麗も作れるものだってこと」
「…………は?」