第26章 帰郷
真子や他数名の当時の隊長格達が犠牲になり、尸魂界を追放されたことがある。
命の危機に晒された彼らを助けるために、喜助さんと他二人が現世へと彼らを連れて行き、匿ってなんとか一命を取り留めさせたことで真子達は生きつないできた。
しかし、そもそもの事件の犯人として罪に問われていた喜助さんと、その逃亡幇助…ならびに真子達を勝手に連れて尸魂界から逃亡してしまったことによって、喜助さんは尸魂界から追放されてしまった。
それが事件の真相だった。
喜助さんは、ただただ真犯人から冤罪を擦り付けられただけだった。
私は分かっていた、喜助さんが魂魄消失事件の犯人であるはずがないだなんてこと。
けれど、私には力がなかった…悟られないようにされていた。
浦原喜助、張本人によって。
いつも通りに寝て起きて、そこにあるはずの…そこにいるはずの人達が、皆私の前からいなくなっていた。
誰も、いなくなっていた。
追放されたという事実を知らされたのだって随分後のこと。
あの時ほどに自分が荒れていた時期は、恐らくこの世界を出るまでの間に私にはなかったことだろう。
しかし、ある時私は事件の真相を知ることとなる。
そしてあの人達と再会する。
それから分かった…分かってしまった。
私という存在自体が、喜助さんの足枷になっていた。
真子達を殺しかけた…最終的には尸魂界も、この現世も滅ぼしかけた。
『私は、…私が、悪い…の…、全部………全部、っ』
「…お前は悪くないだろ、勝手に話捏造すんな……お前の過程は浦原さんからも教えられた。けど、あの人はただの一度もお前のことをそんな風に言わなかった」
『だって、あの人は優しいから…優しすぎる、から…』
「そうか?確かにあの人は優しいだろうけど…俺にはお前の方が、よっぽど優しい奴に思えるぜ?」
それで人生損しまくってるくらいにな、なんて苦笑する中也は、スプーンにアイスをすくって私の方へと差し出した。
『…間接的だったにせよ、私が殺しかけたのよ。……それで死んだ人だっている』
「お前の意志じゃなかっただなんてこと、死んだ奴らも浦原さんや平子達も分かってるだろ」
じんわりと目元が熱くなってくる。
だから皆優しいんだ…誰も私を責めてくれないんだ。
「大事にされてる人には甘えるもんだぜ?当たっても怒ってもいい…でも、甘えられないのは辛いだろ」
