第26章 帰郷
「はい蝶さん、何拗ねてんのか洗いざらい吐き出しやがれ下さい?」
『…何その親バカ、拗ねてないからアイスちょうだ「言うまでやりません」溶けちゃうじゃない』
「お前がとっとと言えばいい話だろ?あらかた察しはついてるが、話だけでもした方がスッキリすんぞ」
私の目の前で次々にアイスを口に運ぶ中也。
…そ、そんな風に釣ろうったって無駄なんだから。
『……』
「…お前、能力使えば食えんのに俺の言うことは守るんだな?」
『あ、…』
「えっ…まさか考えてなかったのか?」
『………べっ、別に!!?そんなことしたら中也さんがかっこつけれなくなるんじゃないかなって考えてあげてただ「お前ほんといい子だよな」な、ッ!!!』
いい子…?
どこが?
私のわがままで喜助さんにあんなことまでしておいて…結局上手くいかなくて、私のことなんか見透かしきったあの人に拒絶された。
わかってる、どうしてあんな風にしてまで私を眠らせて、行為を中断したのかも。
全部全部、私のためだって。
「だって、全部分かってるからあの人には手ぇ出せなかったんだろ?」
『!!…なにが、?蝶、そういうのよく分かんないから』
「嘘つくんならマカダミアとピスタチオはやらねえぞ?」
『…』
しょうがないじゃない、
ぽつり、ぽつりと漏れていく。
そんな風に私の心のうちまで入ってきちゃうの、この人は。
『…だって、…だ、って……』
「…なあ、あの人…なんで一人称が二つも?首領みたいな立場の人ならともかく、あれは…中々するようなことじゃない」
『……私のこと遠ざけるためにあんなことしてたの。私が危険にならないように、目をつけられないようにって…私が一人で置いていかれて、百年以上経ってやっと再会できたかと思ったらあの調子』
当時の嫌悪感は、今でも色濃く記憶の中に残っている。
いくら私を危険に晒さないようにしたかったとはいえ、あんな突き放し方…
『だから、時間はかかっちゃったけどちゃんと嫌だって…落ち着けた時に話ができた、のに…』
やっと元に戻れる、やっと前みたいに二人で暮らせる。
また、一からやり直して一緒に…
そう思っていた矢先のことだった、私がこの世界を追放されたのは。
処分が下ったのは突然のことで、猶予だって全然なくて。
『……喜助さんにとって私って…澪って、特別なんかじゃなかったのかな』
