第26章 帰郷
会わせてやりたかったその思いを忘れるように歩く。
多分、澪は知っている…こちらの世界に、記憶はどうあれ織田が来ているのだということを。
それだけじゃない。
もしかしたら、今まで渡ってきた世界において出会ってきた人物達でさえもがいるかもしれないということを。
そして、恐らく会えたとしても、自分のことはもう覚えていてはくれないのだということも。
「……どれくらい歩くんだ?」
「ん〜、いっぱい♪…だってあなた、瞬歩の心得は無いでしょう?」
「…確かにその移動方法は会得してないが…あんた、俺が異能力者だってこと忘れてないか?」
ニヤリと笑えば、笑顔のままで浦原さんは瞬歩を使って移動を始める。
「ほぼほぼ瞬間移動じゃねぇか…ッ、て早ぇ!!」
目で追いつこうにも、目的地が分からなければ追いにくい。
なんとか動体視力だけで異能を駆使してついていく。
「おおっ、常人が瞬歩についてくるなんて面白い光景だ…まあ僕はこの程度ですけど、多分澪さん相手なら一瞬で見失ってますね」
「!?そんなに速ぇのか!!?」
「ふふ、うちの子は可愛いだけじゃなくて天才なんですよ…っと、そろそろです」
走って走って、天井のはけた場所へと到着する。
すると、元の世界からこちらに来た時のような光の幕がそこにあった。
「だ、誰かに報告とかはしなくていいのかよ?」
「どうせ十二番隊に行き来の情報はキャッチされて、そこから伝達されてるから大丈夫ッスよ。ほら、僕初代局長ですし」
「えらい権力行使だな…」
「…っと、この子にはもう少しまた後で霊子を補充してあげましょう。流石に昨日の分だけじゃあ半分にも至ってない」
行きましょっか、とこちらを振り向いた浦原さんは一瞬俺の背で眠っている蝶をチラリと見て、光の中へ入っていく。
それに続いて俺も勢いよく突き抜けた…が。
「…ッ!!!?て、てめっ…、ここ空中じゃねえかあぁああああああ!!!!!!!」
「あっはっは!!中原さんの能力なら大丈夫かなって♡」
「そういう問題じゃねえんだよ下駄帽子野郎!!!!?」
すぐさま異能でなんとか無事に地面に着地…したかと思えば、変な感触。
「あ?……あ、…悪い、誰か知らねえけど」
「…、誰か知らねえけどじゃねえよ!!!?…って、浦原さん、あんただろ!?あんたなんとかできたよな!?」
踏んづけたのは、男。
