第26章 帰郷
ガタイも良く、そして丈夫そうな身体…しかし、死神達に比べるとものすごく人間人間しい。
そう、魂魄だけの存在ではないというか…
「すまない、怪我の具合は…?…こっちに連れてこられたのは初めてで…見たところ、浦原さんの知り合い……だよな?」
とりあえずすぐさまその男から離れると、立ち上がってから浦原さんの胸倉を掴んで揺さぶっているそいつ。
「!…あ、ああ、大丈夫だよ。おおかたこの人にいいようにハメられたってとこだろ?……って、!!まさか、澪!!!?」
「…なんだ、こいつとも知り合いか」
少しどこかでホッとした。
俺は、言わば異国の人間であって…この世界において俺を守るような存在は、蝶以外には存在しない。
敵と認識されていたっておかしくないのだから。
…蝶は、こんな感覚を何度も味わい続けていたのだろう。
それも、俺とは違ってたった一人で、孤独で。
「来るなら来るって言ってくれよ浦原さん!?俺達はルキアや恋次から口伝いに澪がこっちに来られるようになったとしか聞いてなかったんだぞ!!?」
「おやおや、これはすみません…久しぶりすぎて、ついつい夫婦でイチャつくのが止まらなくて♡」
「どの口が夫婦だなんてほざいてんだ、ああ!!?澪に変なこと教え込むんじゃねえぞこのエロ下駄帽子!!!」
あっ、こいつまともな奴だ。
第一印象はそれ。
多分…きっと、恐らく常識弁えてる奴だ。
「まあまあまあ落ち着いて!…そちらの方が、正真正銘…澪さんの旦那さんッスよ」
「ああ!?旦那あああ!!!?…!って…え、…旦那!!?」
「…一応」
「“あの”澪が結婚!!?嘘だろ、じゃあ平子は振られたのか…あいつ相当ショック受けてるんだろうな…今度粉物でも食わせてやるか」
粉物でいいのか。
声に出すのはなんとかこらえた。
「再会当日に告白して、ばっさり振られちゃってましたよん」
「平子がばっさりって、それ…あんた相当澪に懐かれてるんだな…」
「平子基準でどうなのかは分からないが、まあ…そうなんじゃないか?」
「ちなみに浦原さんは振られたのか?」
「え〜、聞いちゃいます?それ」
答えはノー。
もう分かる…なぜなら簡単な話であって。
「アタシはそもそも、この子に告白なんてしてないですよ。やだなぁもう♡」
するつもりがないからだ。
そう、覚悟をして貫き通しているからだ。
