第26章 帰郷

｢回復…それも、鬼道なのか？｣

｢分類としては、そちらに近しいもの…ある種、少し違った類の“術”ですが、使用方法は感覚的には似ていると聞きます｣

｢…俺、多分蝶に…それを使って、まだ面識もなかったような頃に……命を助けられたことがある｣

｢！！それ、本当ですか…？…全く、本当無茶なことばっかりして｣

本気で安堵する様子の浦原さんに、その深刻さを伺えた。
そういえば、昨日処置をしてもらってから学校の方で鬼道とやらを平子に使いまくってたな…そうか、それで使わないようにしてたのか。

｢ただ、その頃の記憶が無いらしくてな…俺だけじゃなく、他にも蝶と会ったことや助けられたことがあるはずなのに、それを露ほどもこいつが覚えてないだなんてことがあるんだよ｣

｢それは、また奇妙な話ですね…澪が話を詳細にされれば、忘れてたってピンとくらい来るはずなのに｣

｢それで、かなり蝶も焦ってて…それで無理に自分のこと追い込んでたから、それを止めるようにって……核を分けた｣

｢……なる、ほど…？…どちらにせよ、あなたには本当に感謝しかないらしい……この子の核は、この子の心臓が止まってしまった時に身体をリセットできるように施してある…逆に言えば、それだけで精一杯だった｣

蝶の体質というのは、どうやら…本当にどうしようもないものらしい。
想像の域を超えていた。

｢…そんな回りくどいことをして自分と同じような身体に仕上げずに、ちゃんと死ねる身体にさせてあげれば良かったんでしょうけど｣

｢……今、なんて…そんなこと…？｣

｢できないことは、多分ない…が、流石に僕にも道徳心はある。……この子の身体は“生身の人間”。つまり、どういうことか分かりますか？｣

｢！…体細胞分裂のスピードが、一般の人間のそれと同じになる？｣

｢ご名答…まあ、それもなんとかできはするんですけど……“今の”この子がどう生きたいのか、僕には聞く勇気が持てなくて｣

人の命を左右するような…ましてや自分の愛する存在を殺すような真似をしたくなくて、この人は自分と同じにした。

しかし、こうなってしまった今、蝶の意思を尊重するとどうすべきなのかが分からない。

｢…もし、こっちで死ねる身体になったら？｣

｢…身体を殺す保証はまあできます…けど、魂魄がその時にどうなってしまうかまでは｣