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第26章 帰郷


蝶の身体を元にして作られた器…生体情報が書き換えられたのが、俺の身体。
推察でしかないにしても、こんなにも腑に落ちる理論が他にあるだろうか。

「……俺が、唯一こいつと血液を共有出来たのもそのせいか」

「お察しの通りです。…逆に言えば、他のどこの世界にも、貴方のように血液を提供できる存在はないはずですよ」

「!、それじゃあ、貧血の時なんか…能力はどうやって使って…!?」

「この世界には霊子…ほかの世界にも、エネルギー源として代替できる物質が溢れていたはずです」

聞いたことのあるような話に目を丸くした。
そうだ、こんな話、いつかにした…

「今のこの子は…あの世界では、強いと言ってもとても不便で生きにくかったはずでしょう。霊子で溢れたこの世界で暮らしていて、あんなに霊子の無い世界で生活だなんて…この子の核だって、無限のものじゃない。すり減らし続ければ、いずれ終わりが来る」

「…そうなってもしもあんたが蝶のいる世界に干渉できなかったら?」

「彼女の魂魄は、その地でさまよい続けることになっていただろうね」

「……じゃあ、あの“処置”っていうのは?」

「澪は、そちらの世界で“鬼道”と呼ばれる得意な術を行使してはいなかったはずです。鬼道ばかりは、霊子でなきゃ扱えない…二千年弱も霊子が薄い世界…ましてや存在しない世界を生きてきて、核に蓄積されていた霊子エネルギーが足りているわけがない」

だから、自分の感情にすぐに思考がもっていかれる…そしてその割には、ちゃんとした形でそれがどういう形なのかも捉えられない。

「元々感情を表に出すのは確かに苦手ですが、貴方なら知っているのでは?…この子は、元より素直な子ですよ」

「……」

「それから、プロトタイプだとは言いましたが、僕の作った物質よりも遥かに強力な物質を使ってある。やろうと思えば威力はとんでもないものだ…けど、それを使うには彼女が服従し、心の底から絶対を誓うような相手でなければ力になってはくれないもの」

なるほど、それで傷や状態異常を治すための強行手段が“あれ”ってわけか。

「ただ、輸血となると流石に難しいから口移ししかできなくてね…貴方の場合はどちらでもいいんでしょうけど、まあ鬼道さえ扱えれば“回復させることだってこの子にとっては容易いものだ”」

回復…その言葉に、俺は一つ引っかかった。
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