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第26章 帰郷


成仏しない限りは、死者の行く先である尸魂界にも行けやしない。
それに、現世だなんていうそんな世界…蝶からしてみれば、それこそ目の前のこの男以外に何も未練なんて残らないような。

残すのも諦めてしまうような、そんな灰色の世界だったはずで。

「…そこで、当時から科学者なんてものをやっていた僕は、彼女の肉体を調べることにした。そしてそこから…なんと、僕の創ろうとしていた物質の根源となるようなエネルギー反応が見つかってしまった」

「…実験か?」

「まあ、そういうことになる。勿論合意の上でのことですが…そしてそこから、どうにか彼女の魂魄を尸魂界へ連れてこられないかと考えました。……しかし、それが無理だという結論を出しかけた時に、ふと考えついた」

“魂をこちらに連れてこられないのなら、肉体をこちらに連れてきて、そこに魂魄を入れてしまえばいいのではないだろうか”と。

科学者…それも、飛び抜けて頭のきれる人物。
それくらいの印象しかなかったが…それを実行できてしまうから、この人はそれを思いついたのだ。

考えてしまったのだ。

「そこからは結構大変で、僕が理論上作り上げていた物質のプロトタイプをまず完成させました。それから上層部へかけ合って…“死神の魂葬義務”として、合法的にこちらの世界へと連れてきたんです」

「そ、れで…?……まて、分からなくなってきた…つまり、こいつの身体って…ッ」

「正真正銘、生身の肉体そのものです…成長した姿は、この子が生きているうちに体細胞が分裂を止めなかった際の成れの果て。この子自身の魂魄と、僕の作った物質のプロトタイプ…それから、こちらの世界において魂魄に近しく、尸魂界という世界によく馴染んでいる“地獄蝶”を一羽」

理解すればするほど、冷や汗が流れる。

「この子の核と言うものは…この子自身の魂魄と地獄蝶…そしてそのプロトタイプのエネルギー物質。それらが結合して生まれ変わった、“特殊なもの”なんです。…身体の成長が尸魂界に合わせたものなのもそのためで…しかしこの子はそもそも、“死ねていない”」

「…だから、俺とは“器が違う”って、?」

「…貴方の身体は、恐らく永くこの子についていた地獄蝶と、あの世界の“何か”とが結合したものが核となっているはずだ。しかし、それが君の器に入った後に……元にしている整体情報は、この子のそれと同じはず」
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