第26章 帰郷
「一度尸魂界で認識されてしまった魂魄です。もしかしたら…下手したら、魂魄がむき出しになってここへやって来てしまったら、最悪そのまま消滅してしまうかもしれない」
「……ここへ来ている時点でイレギュラーな存在だからか?」
「そういうことです。…それにこの子は、既にこの世界において目をつけられてしまっていますから」
そんなにも残酷な話があるだろうか…そうか、そんなに都合のいい話が最初からあれば、この人がきっととっくにそうしてくれている。
おかしいとは思っていたんだ、ずっと。
蝶はあの身体を死ぬほど…殺してしまうほどに嫌っていたのに、自分をそうした造り手のことを恨んですらいなかった。
寧ろ会いたがっていて、求めていて、その為に死にたがっていて…それでも死ねなくて。
まさかここまでこじれた話だなんて、誰が想像する…?
「当時はこれで良かったはずだったんです。この子の器を壊す機会が訪れるまで…僕が死んでしまうその前に、一緒に殺してくれと言われてましたから」
「…それが今は、俺や…他にも沢山仲間が出来てしまって、どうしようかって?」
「……僕がいじれるのは、形あるもの…僕自身が触れられるものだけ。…魂魄は閉じ込めたりするのが限界で、造り変えようにも触れられないんです」
なんて厄介な話なんだろう…なんて、残酷な話なんだろう。
「それこそ下手な殺し方をしてしまえば…こんなにも執着してしまう存在が出来てしまったのなら、満足のいく死に方じゃないとこの子の未練が残ってしまう。…そんなことだけはしたくない」
「……じゃあ浦原さん、考え方を変えてみないか?」
「?考え方って、どういう…____」
俺の提案に、浦原さんはいつかの蝶のように目を見開いて固まった。
本気なのかと問われれば、すぐに本気だと言い返す。
「元よりそのつもりで半分受け取ってるんだ…お安い御用さ。寧ろ願ったり叶ったりだよ」
「そんな、…“器の方をこの子と同じものに造り変えてくれ”だなんてッ」
「俺はこいつと死んでも離れねえって誓ってんだよ。…今すぐじゃなくてもいい。ただ、蝶になにかあった時…そして蝶が死ねなかった時は……お願いだ。あんたがそうしてやったように…“蝶”にだって、もう独りにさせないでやりたいんだよ、俺は………俺も、」
「……それ、この子には?」
「…そうなった時に伝えるさ」
