第26章 帰郷
義骸にも入らず、死覇装のまま突然現れたそのおかっぱ頭。
私は元より義骸の中にある存在だから関係ないのだが…
私の髪をサラリと解いてしまってから、そいつは私から蝶の飾りとゴムを奪い取った。
「いやあ、そういえば下ろしてもろてなかったなと思て…懐かしい可愛らしさやで?澪、お前そっちの方が童顔隠せるんとちゃうか?」
『な、っ…な、!!!!?…っ、返せこの変態!!!人に勝手に触れてんじゃないわよ!!!赤火砲!!!!』
「どわっ!!?詠唱破棄っておまっ…危な!!?ちょ、ちょお待て、なんでそんな連発して打ってき『赤火砲!!!』だああああ悪かったって!!!!!」
校舎が壊れないよう、窓の外へと向けて放ち続ける…が、しかしそこで真子が律の後ろに隠れたため、更にこちらの神経が逆撫でされた。
『へえぇ、いい度胸じゃないの…言ったわよね?解くなって…ていうかなんでこっちに来てるのよ!!帰れ!仕事サボるな、雛森ちゃんに全部押し付けてんじゃないわよこのアホ面!!!』
「はっ、一回もうちの隊舎に顔も出さんと帰らせたまんまでみすみす逃す俺やないで…お前まだ俺にぜんっぜんデレてへんやんけ!ふざけんな、こっちはお前迎えに行くためにずっと動いとったんやぞ、もうちょい俺にも懐けやほんま!!!」
『あんたが一々喧嘩ふっかけて来るからでしょうが!?京楽さんは何してんのよ、なんで隊長が一人こっちに来てるのに何も____』
「ち、蝶ちゃん…?」
カエデちゃんの声に、ピタリと勢いが止まる。
そして冷静になった。
…拙い、一人で何かと対話してるヤバい奴にしか見えないやつだこれ、なんて説明しよう。
『あ…、ご、ごめん…ええっと…』
「う、うん?…で、その…その人、誰?」
『え、…っ…?』
カエデちゃんだけじゃない。
皆が、このアホ面を見つめている…認識している。
『…見える、の…?こいつが』
「見えるって…何?その人幽霊か何かなわけ?」
カルマの声に、真子でさえもが動揺する。
…全員、見えてる。
『…!真子、あんた義骸は?』
「入ってへんわ一々、あない面倒なもん」
『はあ!?喜助さんの技術にケチつける気!?死ね、今すぐこの場で死に晒せ!』
「お前に俺が殺せるわけあるかい、殴る蹴るで精一杯のくせしおって…その年なっても喜助さん大好きっ子かい」