第26章 帰郷
「んで、結局なんだったんだよ平子の力って?」
『真子の始解はね?斬魄刀から発する香りをかいだ人間の、視覚情報を操作するものなの』
「…結論から言うと、上下左右…それから、前後までもを、反転させて認識させることができる。普通に考えれば、そんなもんに対抗できる人間はおらんわけなんやが…そもそもお前には効かんかったっちゅうんが最大の誤算や、一発しばいてええか?澪」
『やれるものならやってみたら?それであとから逆撫に馬鹿にされるのが目に浮かぶけれど』
しばきにかかってくる真子を、移動能力で交わし続けておちょくり始める。
あっ、これ久しぶりにすると楽しいな、真子いじり。
「うーん…それじゃあ、さっきの中原さんの能力は?」
ピタリと真子と私が同時に止まって、京楽さんへの返答をまつ。
「ああ、俺のは…簡単に言うと、重力のベクトルを操作できるんだよ。ベクトル…って概念は?」
「技術開発局の人間ならまだ…京楽さんと平子さんは?」
「ベクトル…小耳に挟んだことがある程度かな」
「現世で一護の学校に通ってた頃に習ったわ…向きと方向…それから力のでかさ」
そうだ、と中也は続けて言う。
「重力自体を発生させたり無くしたり…そういう使い方と、それを応用させて攻撃を跳ね返したり無効化したり…そんな使い方もある」
『だから中也には、よっぽどの策がないと、物理攻撃が通用しない…その上生身の肉弾戦であれだから、そこに能力まで加わったらもうね』
「これはまたとんでもないお力で…しかも相当鍛え抜いてるでしょうその身体?かっこいいっす…」
「浦原さんにそう言われると嬉しいな…!あれ、でもさっき蝶、お前殺す気でやりあうなら浦原さんならって…」
説明を求められたため、喜助さんの承諾を得て中也にそれを話す。
『喜助さんの能力は…それを応用させて、中也から能力を取り上げられちゃうから』
「!!!!…、成程…そりゃあ、手合わせ程度じゃ使えねえわけか」
「そういうことっすね……って、澪さん?どうしたのそんなにじっと見…、ち、近い!!近いっす!!!」
『……ねえ、目…“変わってる”?』
「「「!!?」」」
じぃ、と覗き込む、綺麗な綺麗な翡翠の目。
しかし、何か違和感を感じる。
癖ついてしまった探りの気持ちが抜けなくて、集中して分かってしまった…この目、新しい。
