第26章 帰郷
「…けど変態だぞ?その男は」
『ふふ、知ってる』
「えっ、澪さん?さっきアタシの味方みたいな発言してたんじゃ…」
『大丈夫だよ、嫌いじゃないから』
「そ、それならよかっ…え…?」
あっ、やべえ…多分これ、半分くらい俺のせいだ。
どこかで何かを悟ったのを見ないふりをしようとした。
しかし、蝶がこちらを向いて微笑んだことによって俺は苦笑いしか浮かべられなくなる。
「…あ、そういえば澪さん!着替え…用意してあるんですが、どうしますか?」
『七緒さん、そんなにかたくならなくていいのに…私平構成員だよ?』
「卍解に匹敵する程の力を持ち合わせているあなたに敵わないだなんてこと、みんな分かってるんですからね?」
『またそんなに尾ひれつけて……着替え、ですか?わざわざ大丈夫ですよ、そんなに気を………へ、…』
渡されていた着替えを蝶に見せれば、それを見て固まってしまう。
『…これ、……どうして?』
「……元柳斎前総隊長が、ずっと保管して下さっていたそうですよ。それを引き継いで、京楽隊長がまた保管し続けて下さっていたらしいです」
浦原さんに説明されて、俺からそれを受け取ると、蝶はそれを胸の前で大切そうに抱きしめた。
『………着てもいいの…?…私、が…??』
「涅隊長からもとっくに許可をいただいている…元々、彼からの申し入れを承諾して保管してあったものだ。山じいもあれで、澪ちゃんのこと可愛がってたからね」
『…ちょっと、外に出てきます』
す、と俺から離れた蝶に、その場の誰もが何も言えなかった。
彼女が出ていったところで、隊長羽織を身につけた人物達が驚いたように京楽さんに問いかける。
「元柳斎前総隊長が、そんな…というより、涅隊長が…?」
「涅がそんなことを…?……あいつがか?」
「…人間、ひとつくらいは長所…というか、奴にも人の心があったんだな?」
さっきからすげぇ言われ様だぞこりゃ。
「はは、そりゃあそうでしょ。愛情表現が苦手なのはお互い様なんだから、あの二人は…澪ちゃん、どこに行っちゃったと思う?」
「…辛気臭い空気はごめんだぜ、澪がまた元気になった頃に会いに行く…邪魔したな」
子供のような見た目の男、それから他の連中も、次々に部屋を出ていった。
「辛気臭いって…」
「…まあ、皆さん検討ついちゃってるでしょうから」