第26章 帰郷
「てめ、っ…何煽るような真似して…」
『あっ、手前って言った』
「なんで俺だけ…ッ!!」
理由が嬉しい分何も言い返せねえ…
「…まあ、久しくその面見れてよかったぜ。俺はまた手合わせに戻るから、調子戻ったらこっちにまたこいよ」
「私も研究の続きだ…十一番隊よりも先にこちらに来たまえ、一応は私の部下なのだから」
『!…はい』
「十三番隊にもまた…!」
「六番隊にも」
剣八を筆頭に、次々と退室していく死神連中。
潔く退室するその様に、煩かったのもあってか呆然とする。
「あ、あんなに騒がしかったのにやけに呆気なくないか…?」
「…澪だって疲れるだろうからな。顔だけ見たかったんだろ」
『!…冬獅郎』
「……おかえり。騒がしくして悪かったな…その様子だと、浦原から処置してもらった後なんだろう?まずはゆっくり身体を癒せ」
こいつもだ、身体を癒せと…
いったい、処置って…霊子って…?
『うん…?元気だよ?』
「ご無沙汰してます、澪さん。…そこまで疲労感を感じていないのも、浦原さんの義骸のおかげ…ですかね」
『勇音さん…!隊長羽織だ!…うん、喜助さんの義骸は凄いの、なんてったって私の喜助さんが私のために創った特別な____』
「はい、澪さんストップ…そんなに褒め殺さないでください、照れちゃいますよ」
ええー、と声を出す蝶の様子に、確信した。
恋人枠でも、ましてや親枠でもない…ある意味別次元の存在なんだ、この人は。
蝶にとって、俺は他の人間に紹介するにあたって“深い関係”という言葉を使う代わりに、旦那だというものになってはいる。
しかし、そのようなジャンルに属す人間が、俺以外にもここにいた。
…もしかして、それで愛人だなんて言葉を使っているのだろうか?
「き、貴様そうやって澪を昔から誑かして…っ、あ、危ないからこっちへ来るんだ澪ッ!!」
『喜助さんは危なくないよ?砕蜂さん』
「そんな男が危なくないわけないだろう!!?あ、あんなことばかりされておいて…っ」
「おい女、その話詳しく聞かせてくれ」
「えっ、ちょっと砕蜂さん、アタシの身に危険が及ぶから止め____」
『私は喜助さんのアイジンだから仕方ないよ。それに喜助さんは、私が嫌がることは絶対しない人だから』
真っ直ぐ見据えた瞳は、俺に向けるそれと同じような…