第26章 帰郷
「きゃ、客人…?」
「え?だって君、ここに来てるってことは…その子に自分の身体捧げたってことでしょう?」
「京楽さん、言い方が卑猥ッス」
「これは失礼…でも、そういうことなんじゃないの?君なんでしょ?身体の中に、半分分けちゃって…しかもそれを受けて尚生き延びられてる子って」
「!!」
僕の方からも、本当にありがとうね。
なんて微笑むその相手に、自分がしでかしたことのデカさを改めて思い知る。
こんな予定ではなかったはずだが、想像以上に影響を及ぼすような行為を、俺はしでかしてしまったらしい。
異世界との交流…今更ながら、少し落ち着かなくなってきた。
「まあ、立ち話もなんだし、僕の隊舎においでよ?お疲れだろう?」
「い、いいのかよそんな…こいつならまだしも、俺は外部の「だぁから、君は大事なお客様だって」…じゃあ、お言葉に甘えて」
うん、それでいい。
にっこりと笑ってから、京楽さんは歩き始める。
その後ろについていくと、大きな大きな木製の門の前に案内された。
大きく“一”と印されるそれに、ここが隊舎であるということを認識する。
『…、ん……ぅ』
「!蝶?……、まだ寝てるか」
「んん?…戻ってきたことが分かるのかな、この子には…ゆっくりと身体を癒していってもらわなきゃね」
開かれる門をくぐっていき、和式の造りの建物の中へと入る。
…落ち着く。
雰囲気や空気感がというのもあるのだろうが…この世界が、とても俺にとっても心地のいいものに感じられる。
「あ、戻ってきた…隊長、ダメじゃないですか自分だけ抜け駆けなんかしちゃ?皆我慢して待ってたのに!」
「だってどの道僕のところに案内するんだよ?それなら僕から出向いたってよくない?」
「権利まで行使して…私もついていけばよかった」
「七緒ちゃんはお仕事あったからだーめ♪」
「全てあなたがそちらに出向くために働いていただけなんですがね?」
眼鏡をかけた、黒髪を纏めた女。
黒い装束に身を包み、一と書かれた木の札を身に付けている…松本と似たような装いだ。
「一番隊の…副隊長か」
「!これは失礼、挨拶が遅れました。私は一番隊副隊長、伊勢七緒…お話は伺っています。すぐにお茶と…それから着替えを用意しますね」
「いや、そんなに気を使わなくても…着替え?」
「はい、着替えです」