第26章 帰郷

｢｢愛人！！！？｣｣

乱菊さんと中也の声が重なる。

『…中也さん、なでなで』

｢！！？お、おう！？｣

要望通りに撫でられる心地良さに、ついついまた甘えが入る。
これ好きだ、やっぱり…大好き。

｢…じゃなくて、愛人って！！？本命がいんのに蝶になにさせてんだあんた！！！｣

｢やだなぁ、アタシと澪さんは愛人じゃなくて“アイジン”っスよ？うちの澪さんに変なこと教えないで下さい？｣

｢いや、ぜんっぜん分からねえんだが！？｣

『喜助さんの本命の人は私じゃないの。でもね、私のこ…＿＿＿＿』

意識が薄れていく最中、中也さんが私を呼ぶのが聞こえたような気がした。






｢蝶…！！？…、う、浦原さん…あんた、また何を？｣

｢流石にこのレベルの機密事項をこんな大人数に知られちゃアタシもこの子もまずいですからね…澪さん、処置を終えた後こんなに可愛くなっちゃうから｣

俺の腕に抱かれたまま意識を失った蝶の頬に触れ、そこから指で唇をなぞる。
その手の動きがやけに官能的に感じられもして、どこか浦原喜助という人物に勝てない“何か”を感じた。

｢……蝶は知ってんのかよ、それ｣

｢はい、勿論…一番最初にお話しましたよ｣

｢それなら、納得してるってことだな？…それならいい。けど、その話…俺には聞く権利くらい、あるんじゃないのか？｣

｢そのつもりですよ。わざわざ言う予定ではありませんでしたが、言っておくべきであるとは思いますし｣

なんなら、こちらの世界でゆっくりお話しませんか？

言いながらその場に現れる、光。

｢…首領、どうされますか？｣

｢私も見てみたい気はするが…またの機会にさせていただこう、流石にこれは、福沢殿にも話を通した方がよさそうだ｣

｢……尸魂界、だっけか？…分かったよ、案内してくれ｣

｢喜んで♪…澪さん…こちらの世界では蝶さん、でしたね？……しっかり抱いていてあげて下さいね。本当に、寂しがり屋で臆病な子ですから｣

僕の影響も大きいんでしょうけどね、

呟かれた声はどこか儚かった。

いったい何なんだろう、この男は。
いったい…

現れた障子が開けば、空間の歪められたような、様々な色の光が混在する膜のようなものが見える。
その中に案内されて、中へと一歩踏み出した。

｢中原さんは戦闘はお得意ですね？｣

｢あ？まあ、多少は…｣

｢なら安心だ｣