第26章 帰郷
白哉さんと喜助さんも中に入ってきて、外の事態に動揺しているようだった。
「えっ、あの氷澪さんが!!?…もうまったく、あんなことできるようになっちゃったんスか?流石アタシの娘!世界一!!」
『喜助さん静かにして』
「はい」
「「「意思弱ぇよ…!!」」」
しゅん、とする喜助さんだけれど、それからこちらに歩いて近づいてくる。
それを見据えて黙って見ていると、彼は私の目の前で立ち止まって、視線を合わせて膝を曲げた。
「…緊張したでしょう、気疲れしてしまったはずだ…相当ショックも大きかったね?今のは」
『!…、ぁ……、ッ』
「「!!!?」」
私よりも大きな手のひらの喜助さんに片手で目を覆われて、頬にも手を添えられてから、耳元で優しい声色で囁かれる。
思わず安心しきってからだから力が抜けていくと、頬に添えられていた手が動いて、首筋に指をあてられる。
「…ずっと一人で耐えてきたんだ、この疲労具合じゃあ相当辛かったでしょう……今手持ちの分が少ししかありませんが、久しぶりに霊子を補給した方がいい」
『ふ、ッ…ぁ…う…っ、………ッンン、…♡』
首から身体の中に流れ込んでくるその感覚が久しくて、それに酔いしれていればガクッ、と膝が崩れる。
それを支えに入った喜助さんにしがみつくと、よく頑張りました、と額に口付けて、視界を覆っていた手を離された。
『あ、…ッぅ…、はぁ、っ…』
「う、浦原…さん?……ち、蝶に何を…?」
「!おっと、そういえば中原さんも…そちらは大丈夫そうですね、器が違う。……何、直接的なメンタルケアのようなものですよ」
「こっちにおった頃は定期的に処置してたわ。慣れといたほうがええで、こいつらのことは気にしとったらキリがない」
「そ、うなのか…?…ち、蝶…身体は…その、…?」
中也の声が聞こえる。
そっちに目を向けると、少しぼやける視界にその人が映って、能力でそちらに飛び付いた。
『ん、っ…すき……』
「!!!!!?」
「え、嘘…?」
「これは…」
「…澪、さん……?」
中也が慌てて私を受け止めれば、その場が静かになる。
「…初めて見た、澪が処置の後に…浦原さんから離れるなんて」
「!は、はあ?どういうことだよ??」
「れ、れれれ澪さんが…離れ…っ、ぱ、パパショック…!!!!」
「貴様、自称愛人ではなかったのか?」
