第26章 帰郷
『で、いつまでこうしてるつもり?』
「嫌なんか?」
『嫌じゃないけど気持ち悪い』
「なんやそれ、暴言反対やで」
『真子はそっちよりも、横にいてくれる方が違和感ないっていうか…』
チラリと顔を上げて目線を向ければ、呆然としたようにこちらを見つめられる。
「…な、なんや……そ、そう…か?……照れるやんけ、いきなりデレんなや」
『別にデレてないけど』
「あ、くっそ終わってもた」
なんて言ってるうちに、コンコンコン、とドアがノックされる。
恐らく中也だったのだろう。
それからスムーズに入ってきて…私を目で捉えてから、固まった。
「…お、終わった…のと、首領に来ていただいたんだ、が……」
『………離れて?変態』
「んなっ!!?誰が変態や、誰が!!!」
『抱きつくまでは許してあげたんだから、寧ろ感謝しなさいよね?』
バッ、と離れた真子。
その様子にようやく意識を取り戻したかのようにハッとする中也…を、乱菊さんが急かすようにぎゅっと後から抱きついた。
「なぁに止まってんのよ?早く入らないと後ろつまってるわよ?」
「…あ?」
『へえ?』
「……澪…?」
私の様子が変化したのに気がついたのか、流石真子。
そういうところだけは鋭いようね相変わらず。
「…進めっつってんならその腕離せよ」
「ええ〜?挨拶みたいなものじゃない、あ・い・さ・つ♪」
「けっ、知るかんなこと。こっちはそれよりも、蝶の方が心配で……って、おい?蝶さん…いや、ごめんって…ごめんなさいって!!?」
『何謝ってるの?大丈夫だって、何も見てないから』
「大丈夫じゃないのは俺なんやけどそのへんは…わかっ、……てやってるよなこれ!!?」
無意識の内に真子の頭をグリグリしていたらしい。
『あ、ごめん。分かってなかった』
「おっ前…、…なんや?あれだけで妬くんかお前?」
『いつの間にそんなに仲良くなったのかなぁって…ねえ?中原さん?』
ピシィッッ!!!!
と空気が凍りつく。
「え?…澪、どしたの?」
『別にどうも』
「っと、やっと中に入れた…蝶ちゃん!?廊下!氷始めてるから!!!まぁたご機嫌ななめになっちゃったの?もう…何したの中也君?」
「…別の女に抱きつかれました」
「あんた、そんな…あらあらあら、可愛くなっちゃって…」