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第25章 収束への旅路


一通り堪能した後に蝶の浴衣を整えてから、お詫びというか、お礼というか…再び甘味を食べにフロアを移動し、甘味屋に入る。

「こんな時間なのにすげえ人だな」

『…ッ、…なんか落ち着かない』

ボソリとそう零してから、蝶は隠れるように俺の背中にピタリとくっついてくる。
なんというか、子供らしいというか愛らしいというか…懐かしいというか。

「どうしたんだよ、そんな隠れ……どうした?」

『!!…なんでも』

「…お前がそう言う時は大体何かあるんだが?」

隠れて、遠慮がちに俺の浴衣を掴んだ少女だが…少しその手が震えていることに気が付いた。
どういう状況だ?

こんな…こいつの一番はしゃぎそうな店でこんなこと。

『……多分、気にしすぎなだけだから』

「…気にしすぎって、何が?」

『ぁ…、…な、んか…変に視線集まって…る気がし、て……なん、か…やだ…』

「!…店、出るか?もう少し人が少なくなるまで待ってもいいし」

頭を撫でながら声を柔らかくしてそう問うと、素直にコクリと小さく頷いた。
店から出て、近くにあった椅子に腰掛けるよう促してから飲み物を買いに行こうとする…のだが。

「座ってていいぞ?買いに行くのもすぐそこまでだし、ゆっくりしてて…」

『……離れるの怖、い』

「…何かいるのか?この旅館…人間か?相手は」

声を小さくして聞くと、分からないと首を横に振る。
しかし、彼女がそこまで訴えかけてくるのだ…恐らく、よくない輩が紛れ込んではいるのだろう。

手を取ってから飲み物を買いに行って、それから二人で椅子まで戻って腰掛ける。

『……部屋、戻る…ちょっと、これじゃ大浴場行きにくい』

「…それはそうだな、確かに得策だ…露天風呂にでも入ってくるか?今度こそゆっくり」

紅茶を飲みきってから蝶はそれに頷いて、一緒にまた部屋まで戻っていく。

部屋まで戻れば落ち着ける…そう思っていたのが馬鹿だった。
何故ならば、ここは以前の旅館と違って横浜だから。

それを忘れていた…それがどういうことであるのかを、忘れていた。

『…ッ…、?…』

部屋に戻ってからも何かを気にしているような蝶だが、それでもまだ二人になれたことによって少しは落ち着いたのだろうか…肩の力が抜けたような気がする。

「入ってこい、ここの風呂なら…何かあったら俺が気づけるはずだ」
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