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第25章 収束への旅路


『蝶、トマト食べました』

「…そうだな」

『…ご飯も今日の分、全部食べました』

「……ごめんって」

事の発端は数分前。
まさか蝶がこんなプレゼントを用意してくれるだなんて思ってもいなかったため、数日間風邪で寝込んでいたのもあってデザートが冷蔵庫に何も無かった…つまりはそういうことだ。

『…中也さんの手作りデザート無いの…?蝶が作っちゃダ「ダメ」…』

「……作るにしても、材料が完全に足りてねぇからなぁ…外に食べに行くのじゃダメか?」

『……明日は作ってくれるの?蝶、中也さんの手作りが一番好きなの…明日はある?』

「今日の帰りに材料たっぷり買って帰ろう…そんなに言われちゃ作るしかねえだろ、楽しみにしとけよ」

『!…いいんだ』

「あ?お前から言ってきたのに何言ってんだよ?」

当然のようにして言うのだが、それでもこの少女は拍子抜けしている。

随分と子供らしいわがままを言えるようになったかと思えば、今度はそれに了承する俺に対して不思議な目を向けるようになり始めやがった。

『…怒らないんだ、って…思って』

「……俺の方からわがまま言えってわがまま言ってんのに、なんでわざわざ怒るんだ?俺がお前に怒るようなことはもう分かってるだろ」

『だって、何か作ってくれるなんかママも……ごめんなさい』

「いいよ、気にすんな。…親だって人によるさ、俺はたまたま、お前のことそうやって甘やかしてぇ奴だったんだ」

嘘ではない。
間違ってもいない。

しかし、やはり…引きずってやがる。
仕方のないこととはいえ、偉く情緒が不安定だ。

肉親の話を口に出すだなんて。

『…蝶、寒いとこ嫌い。……水の中も、痛いのも嫌い』

「……知ってる。俺にあっためられて優しくされてろ、お前は」

『……でも、痛くされても大丈夫だよ?…何、されても平気…だから……食べなくても、大丈夫、だし…何されても耐えられ「蝶」!!…ごめん、なさい』

俺に縋り付くように回した腕も震えている。
…そんなに怖いか、幸せなのが。

そんなに嬉しいのか、俺といるのが…そんなに怖いのか、それが失われるのが。

「…無理しなくていい、俺はお前が怖いことはしない。…どういうことかわかるか?」

『?…中也さんは、優しいから……』

「……勝手にどっか行ったりしてお前のこと寂しがらせないっつってんだよ」
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