第25章 収束への旅路
『…かっこよかったなぁ…中也さん』
「お前マジで天職なんだな…俺でも相手に同情すんのに」
『……やっぱりあの人になら殺されてもいい』
「…本気で言うなよ、ビビるから」
相当と恐ろしかったらしい。
本当にスピーディーに終わってしまったその尋問に、私からしてみれば夢のような時間だったのだが。
『…それにしても、回すってどういうことだったんだろ』
「え…お前、それ聞くか…?」
『?だって、中也さんが言ってた最終手段みたいなものでしょう?』
女性相手に有効な手段であると、立原は説明した。
が、私にはよく分からない。
『いや、だから詳細を聞きた「なぁにだべってんだよ?」!!中也さん、おかえりなさい!!』
「あ…、お疲れ様です」
「おう、サンキュ…んで?何話してたんだ二人して?」
『中也さんが最後、“回す”って言ってたのって「お前、まさか覗いてたのか?」…あ、…』
「……へぇ?」
中也さんの笑みが黒いものに変わる。
「見せねえようにしたよなぁ?確か…聞こえねぇようにもし……!…血ぃ付いてる…先にそれ落とそう、お前にんなもん付けてたくねぇ」
『…いいのに、そんなの』
「俺が嫌なんだよ、あんなんの血液付けてるだけ無駄だ」
散々な言いよう…これは相当イライラしてるな。
一度食堂に移動すれば、布を濡らしてそれで私の頬を撫でる。
立原とは解散して、夜になっているせいか人もいない。
「…それで?…あんなもん見てて怖くなかったのか?」
『?…うん、綺麗だった。かっこよくて感動しちゃった』
「!……変な奴…大概頭やられてんなお前も」
『中也さんにだけは言われたくない…で、回すって?』
「………望まぬ性行為ってやつだ。相手によっちゃ、それが一番手っ取り早い」
そこまで言われてちゃんと理解した。
…そりゃあ、中也さんが見せたくなかったわけだ。
『へぇ…誰かにそういうこと、したことあるの?』
「阿呆、俺はそこらの構成員とは役職がそもそも違うんだよ、誰がするかんなこと…」
『…の割に得意そうじゃない、ああいうの』
「得意なわけあるかよ、この年になるまでした事ねぇのに…お得意の読心術で分かってんだろ?」
…まあ、その通りだけれども。
『怖くはなかったけど妬いた。あんな風に殺されてみたいなぁ』
「言ってろイカれ女、一生殺してやらねぇよ」
