第25章 収束への旅路

俺だからこそ大丈夫ではあるが、相当な力で抱きしめられているわけで。
腕の力から伝わる、蝶の気持ちとその重み。

｢…してほしいの？｣

『ん…はい…、』

｢そうか…よく、言えました｣

ちゃんと撫でて、額に口付けて褒めてやって。
それでも足りない…足りていない。

離しちゃいけない…触れてやらないと、いけない。
大事にしてやらなきゃならない。

俺が教えてしまったんだ…そのくらいの責任、覚悟の上である。

｢まだ抱きついときたい？｣

『…中也さん、が…抱きしめてるの』

｢…よく分かってんじゃねえか？…でも、これで怖くないだろ？ちゃんと｣

『……ちょっと、痛い』

俺からの重い重いお前への愛だ、光栄に思えよ。

なんて偉そうなことを言ってのけ、頭を撫でていた腕をまた蝶の体に回して、更に抱きしめる力を増す。

『い、たぃ…ｯ、…苦し、…！』

｢これはわざと｣

『……っ、…好き…大、好き…ｯ、……好き、…？』

｢もっと力入れねぇと分からねえ？｣

流石にこれ以上は入れないけれども。

告白まがいな事を言われて、もう何度も伝えられているはずの彼女からのその言葉に、また覚悟を決めて…そして今まで以上の気持ちを持って、返す。

｢…何回聞かれたって、その都度愛情上乗せして返し続けてやるよ…お前のこと、世界一愛してる奴が目の前にいるって教えてやっから｣

『！！！…、……蝶のこと、見てくれる…？…嫌いにならない？嫌じゃない？面倒だとか、気持ち悪｢ストップ、ストップ！！お前俺がそんなこと思ってる奴と共同生活営めるほど狂気じみた頭の奴だと思ってんのか！？｣…頭おかしいもの、中也さん』

これはまぎれもなく本音だな？蝶さん。
まったくもって素直なことで…

｢お前にだけは言われたくねえよ、このもの好き…あんま自分のこと卑下すんな、自信持て？何せ、お前が惚れた男が見初めた唯一の女なんだぞ？お前は｣

『…唯一？』

｢そこに疑問持つなよ｣

『……う、ん…言ったからね？…言ったよ？中也さん』

｢はいはい、何回でも言ってやるよ…妬いたらなんでも受け入れてやっから安心しろ｣

『太宰さんのところに家出するかも』

｢悪い、それは全力で迎えに行くわ、許可できねえ｣

返答がお気に召したのか、ぎゅ、と軽くまた抱きしめてから、俺の後に回る彼女。

…可愛らしいじゃねえか、やっぱり。