第25章 収束への旅路
「どうしたのどうしたの!!?いったい何…が…っ、!!!!!?」
「なんだこの声!?医務し、つ…から…ッ」
バタバタと、走ってくる足音。
蝶の大きな大きな叫びを耳にした奴らが集まってきた。
ここには今日は、俺と蝶しかいないということは知れていて…だから、ここに駆け付けてくる奴らも限られていて。
「……蝶、ちゃん…?」
「…泣き止ませないでやってくれませんか。……数百年分、我慢してたのをやっと吐き出してくれてるんです」
「中也、さん…?…我慢してたの、って…」
泣き声を抑える余裕もなく、他の目も気にしないで、ただ目の前の俺を求めている。
求めていたというように…誰かにそう言ってほしかったのだと言うように。
飢えていた…飢え続けていた。
羨ましくて、妬ましくて、悲しくて怖くて不安で…けれどそれさえ、実感が湧かなくて。
“生きてる心地がする”と彼女は言った。
そりゃあそうだ、俺なんか半分でもう自分の身体がおかしくなってることに気付いてる。
「…中也さんまで、泣いてるじゃないですか」
樋口が言った。
そしてようやく理解した。
俺も涙を流していたということを。
「…こりゃキツいわ……“たったの半分”でこれは…」
俺にはお前がいてくれるから大丈夫なだけで。
俺には、元々自分を認識できていて…俺を求めてくれる愛しい存在がいてくれて。
けど、お前は生まれた時から…物心がつくそのずっと前から、全然分かっていなくって。
「………よし、さあ皆、本日君達には重大な任務を与えます」
コホン、と咳払いをしてから、首領が言う。
樋口君と芥川君はこれ…広津さんはこれで、立原君はこれを。
銀ちゃんにはこっちをお願いしようかな。
なんてメモを用意していき、それぞれに渡していく。
そんな様子に蝶も気が付いたらしく、泣き疲れたのかもう涙を流し過ぎてしまったのか、かなりの時間が経過してからようやく呼吸も落ち着かせ始めた。
『ッ、…っ、ぁ…、な、に…?…中也さ「いいよ、このままで。…遠慮はしなくていい…もう分かるだろ?遠慮してたの」…、ん…、ふ…ッ』
泣き顔を隠すようにまた俺の胸に顔を埋める蝶を、今度は撫でる。
「それから中也君には…そのまま、二人共落ち着いたら、一緒に僕のところまで来てもらおうかな」
「…そう、ですね。……蝶、移動できそうか?」
『……おんぶ』
