第25章 収束への旅路
『中也さん…、その…』
「なんだよ…もう少しくらいこうさせてろ」
『……っ、…す、ごく…あの……どきどき、する…の』
いたたまれなさや、どうしてもっと早くに無理矢理にでも半分分けさせてやらなかったのかと…そんなやるせなさ。
それらが入り交じって、後悔の気持ちや、目の前の相手が大切であるがゆえに共感してしまって、とても自分が情けなくて。
蝶を衝動的に抱きしめて、強く強くそうしていれば、次第に彼女の腕も回される。
そんなことにもとてつもない安堵を覚えてしまうほど。
どれだけ、安心していたんだお前は…どれだけ、こんな行為に飢え続けていたんだ、お前は。
そりゃあ、泣き虫にだってなる…言葉に表せない感情にもなってしまう。
分からなくもなるし、知らなくたって当然だ。
どれだけお前は、耐えてきたんだ。
「…頑張って、きたんだな…本当に」
『え…、…?』
「……ごめん、俺こんな性格で…お前の事ずっと好きで、好きすぎて逆にこんな風に構えなくって……もっと抱きしめて欲しかったろ?もっと、撫でて…大事にして、触れ合って…」
日本生まれじゃないからだとか、そんな次元の話じゃない。
こいつにとってのスキンシップは…それも相手が、こんなにも執着してしまう俺ならば。
自分に向けられることで、己の存在をようやく実感し得るもので…他に向けられるだなんてことがあったら、心臓が抉られるように嫉妬心が渦巻いて…
「ちっさい頃も…今だって、そうだ。…もっと抱きしめて、手だって繋いで……じゃないと、お前本当に…ッ」
自分がいる意味が、分からなくなってしまってたんじゃないかって。
不安どころか、それを通り越して虚無感さえ味わってしまっていたのでは、なんて。
『……大丈夫、慣れてるから。…中也さんが頭がおかしかっただけで、私なんかそんな…ッ、…!』
耳に口付けて黙らせた。
まだ怖がってやがる…まださらけ出してやがらない。
まだ、足りてない。
全然こいつには、足りていない。
「自分の気持ちに素直んなれ…、もういいから。もう俺がいるから…俺も、ちゃんと同じになったから…」
『……んで、…?…なんで、中也さんって…ほんと…』
「…この前のわがままだって、お前…あれ、狂いそうな程に我慢してたんじゃねえのかよ」
ビク、と、蝶の身体が震えた気がした。
