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第25章 収束への旅路


昼食を食べ終え、半ば強引に俺の願いを聞き入れる形で残ってくれることになった蝶。
本人としては、学校に行くこと自体は仕事だと定義付けていたために抵抗はすごくあったはずなのだが。

ゆっくりしてきた頃に、ようやく違和感を持ち始める。

「…なあ、蝶?本当に良かったのかよ今日?」

『!…うん、良いよ。滅多にない中也さんのお願いだから』

「俺からのわがままは割としょっちゅう言ってる気がするんだが…?」

『そう?…いいの、中也さんのお願いなら』

いや、確かにそれはそうだが…お前なら確かにそうなのだが…。
妙に引っかかる。

蝶が、自分の方から…俺から何の提案も無しに学校を休むようなことがあるか?

まさか学校で何か……いや、昨日そんな様子はなかったから恐らくそれは違う。
だとしたら原因は…?

蝶が考えるとしたらまずは俺絡みのことなはずだと自覚はしているのだが…

「…蝶、俺に何か隠してる事か…言えないことか、あるか?」

『?ないけど…どうして?』

「…いや、昨日ああいったことがあったばかりだから、なにかまた必要以上に気負ってないかと思って」

『!……中也さんは蝶のなんでしょう?…一生お互いのものになるって、もう覚悟は決まってたから』

それなら構わないが…

『…ごめんなさい、本音を言うとその……まだ、何だか感覚に慣れなくて落ち着かないの』

「落ち着かない…って……感覚に、慣れない?」

『なんて言うんだろう…生きた心地がするっていうか、生きてるって実感できるようになってきたっていうか…』

言われて、少しだけ腑に落ちた。
俺は蝶から力を譲渡された側で、受け取ったエネルギーと、元々備わって機能し続けてきていた生命エネルギーとが、ようやく折り合いをつけて安定し始めた状態が今なのだ。

意識を集中させればこれまでとの差は歴然で、まず一つは感覚が異様に鋭敏になったということ。
気配や、“気”さえ感じ取ってしまうほどに。

そして、そのせいで分からなくなってくる。
自分の体の感覚が。

まだ俺は、つい昨日までこんな状態じゃなかったからマシだろうが…この感覚が倍になって降り掛かっていると考えると、少しだけ身震いする。

痛みか、激しい快楽でも与えられなければ…自分の存在が、認識出来なくなってしまいそうな。

周りの存在が、気になってしまう…そんな身体。
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