第25章 収束への旅路
「うんうん、好調そうだね!この調子ならもう復帰してもらっても大丈夫そうだ…けど、今日はまだ一応任務は無しね」
「な、なしなんですか…ただでさえ幹部になってから少なくなってるのに…」
「いいの?増やしたら蝶ちゃんもっと付いてきちゃうようになるけど」
「…」
勿論それはそれでいい、可愛いし。
可愛いし。
大事な事なので繰り返した。
いや、しかし問題はそこじゃない。
ついてこさせたらあれだ…生活習慣に悪影響が更にかさむ。
「ね、今日はおとなしくしてて。昼食はどうする?うちで食べていってもいいし、一度どこかに出てもいいし…」
「昼食…そうですね……蝶は何が食べたい?折角だし一緒に食べてから…」
『…中也さんのご飯が食べたい』
「ああ、可愛いなぁもうお前は…よし待ってろ、すぐに作ってやる。なんなら食べ終わったらお茶でもしに行くか?デザートは「中也君相当蝶ちゃんのことがまた可愛くなっちゃったみたいだけど…どうしたの?いつも聞いてるけど、大丈夫?」問題ありません、通常です」
そう、蝶が可愛らしいのは常になのだから。
…それにしても素晴らしいな、甘えられるって。
しかも相手が蝶だぞ?
どこまで尊みを増していくんだお前は。
『寄り道してたら学校行くの遅くなっちゃうから…』
「そ、そうか…それなら仕方ないな、じゃあ簡単なデザートも作ってやるよ。パンナコッタ辺りならすぐ仕上げられるし」
『!…はい…っ』
瞳がぱあっと輝き始める。
眩しい、その瞳が…白石蝶という存在そのものが。
「もう学校行かずに執務室で飼っていい?お前…」
「中也君、それ色々と響きとかがアウトだからやめ『構いませんよ…?』ち、ちちち蝶ちゃん…!!?」
思わず漏らした本音に本気で了承されてしまい、俺は一瞬思考を停止させた。
ああ、そうだった、こいつはこんな奴だった。
ほんとにこの女は…
「…だそうです首領、許可をください」
「だいぶ疲れてるね今日!?中也君!?正気に戻ってくれないかな、君常識人だったはずだよね!!?」
「蝶が最優先なのが規定事項ですから…」
『…今日と…後はお休みの日なら、全然。…蝶は中也さんのものですから』
そう言った彼女の瞳に、どこかまだ影があったことに、俺はまだ気付いてはいなかった。
忘れていたのだ、彼女が心配性を拗らせすぎている人間だということを。
