第22章 云いたかったこと
結局さっきの少年はどこかへ颯爽と行ってしまって、すぐに私から離れていった。
それにしても美味しそうなお菓子…こういうお菓子を見るのはいつぶりだろう。
渡された棒付きのキャンディを見つめながら何を考えるでもなく足を動かす。
すると、何やら騒がしい街中。
ざわざわしているというか、なんだか人が皆して動揺しているというか。
『?…あれ、こんなお昼間に…?』
見ると、街中にとまる何台もの黒い車…そして黒服さんたち。
間違いない、あの人達何人か見たことある。
ポートマフィアの人達だ。
お仕事なのか、よっぽどの緊急事態なのか…
なんて呑気に考えていると、ぱちっとその中の一人と目が合ったような気がした。
するとその人がこちらの方に歩いてきて…って、え?なんで歩いてくるのこの人?
「見つけましたよ!!さあ、中原さんが心配されています、戻りましょう!!」
『!……かない』
「?どうしてで…!?消え…っ?」
何だろう、すごく子どもっぽい。
なんでこんなに抑えがきかないの。
嫌だった、なんだか…そんなに親しくもないのに触れられるのも。
あの人じゃない人が迎えに来るのも…?
___何してるんだろう、私。
これじゃ、余計に中也さんに迷惑かけてるだけになってるじゃない。
大人しくお仕事手伝ってたら、ここまで迷惑かけることなんか何も…
「…っ、つけた…!!」
『!?…ッ、や…っ、!!?』
移動した先は入り組んだ路地裏。
人目にもつかないようなところ。
突然に腕を体に回されて、力いっぱい動けなくされて、また咄嗟に能力で抜け出そうとした。
けれど、そうは出来なかった…安心するにおいに、大好きな声に何も出来なかった。
「……良かった、っ…何もなくて…!」
『!?…ちゅうやさ…』
「…お前、なんで何も言わずに外になんか出ちまうんだよ…外に一人で出て、何かあったら…俺はどうしたらいいんだ…ッ?」
『な、にかって…なんで、って……』
なんで出ていったか、そんな事言えるわけがない。
だって、言ったら絶対嫌われる…嫌に思われて捨てられる。
いい子でいなくちゃいけないのに、悪いことばかり考えて。
気を引きたかった、ただそれだけだった。
ただ大好きだって返して欲しくて…言ってもらわなくちゃ不安に押しつぶされそうになって。
言葉にならない言葉が、全て雫になっていく
