第22章 云いたかったこと
『…冗談です、ごめんなさい…ここの資料、森さんとこに持っていってきますね』
する、と横を通り抜けて、彼のデスクにあった資料を纏めて手に抱える。
「げほ、げほっ…!!ち、蝶!?それ別に今持っていかなくても『行ってきます…』蝶おおぉ…!!!」
恥ずかしかった。
何聞いてるんだろ、私。
自惚れするなんて調子のいいやつ…
医務室に入り、森さんの元へ資料を持って歩いていく。
「!やあ蝶ちゃん、どうし…どうしたの!!?すごい顔してるよ!?」
『っ、…だ、大丈夫です…何ともないんで』
こんな馬鹿みたいなことで困らせちゃいけない。
…別に、仕方のないことだ。
私が一方的に想ってるだけ…彼は何も悪くない。
想ってしまう私がいけない子なの。
「そ、そう?…ってそれ、夜でも良かったのに…?」
『…お仕事は早く終わらせるに越したこと、ないですから』
「………中也君と、何かあった?」
『…中也さんはいつでもいい人です…今日も優しいですよ、物凄く』
「ふふっ、そりゃあこんなに可愛い子が慕ってくれてるんだ…中也君も嬉しいだろうねぇ」
良かった、顔に出てない。
これなら大丈夫…バレてない。
『じゃあ私、戻りますね』
「うん、あんまり根詰めないようにね?君も…中也君だってまだまだ体は未熟なんだから…仕事もそんなに大変なものを回してるわけじゃないんだし」
『?根詰めてないですよ?』
「…その年の体であまり働かないようにね?自分で思う以上に疲れちゃってるはずだから…倒れでもしたら中也君、心配するよ?」
私が倒れて心配って…そんな大袈裟な。
大丈夫なのに。
『倒れたところで死ぬわけじゃないのに…』
「…蝶ちゃん、その考えは…僕も、悲しくなっちゃうかなぁ…」
『…?悲しい…?』
「中也君には絶対そんな事言っちゃダメだよ?いい?…君に言われると、いくら彼でも胸を痛めて泣いてしまう」
…そういえば、私あの人に泣かせたりしてばかりだっけ。
あれ?私…
あの人の事、笑わせてあげてられてるっけ…?
『……はい』
「うん、いい子…じゃあ、中也君が一分一秒でも早く君に会いたがってるだろうし…帰って抱きついてあげてみ『む、無理です…!!!』…?そ、そうかい?すごく喜ぶと思うんだけど…」
意識し始めたばっかりなのに…そんな事、恥ずかしくてできないのに。
