第22章 云いたかったこと
『こ、こ…これ、終わったので置いとき…ます…っ』
「お、おう…?」
終わった分の書類を纏めて中也さんのデスクに持っていき、ぎこちなく自身のデスクへ戻っていく。
い、今こっち見てる!?
見てる!!?
なんて視線さえもが恥ずかしくて。
「……蝶、これ___」
『は、はい!!?どこか間違ってましたか!!?ごめんなさ「いや、そうじゃなくて…相変わらずすげえ速さで仕事終わらせるよなって」へ…あ、ああああ、渡す時間考えないと中也さんの迷惑に』
「だから違うって」
『ぅにゃッ…!?』
ペシ、と軽めに頭にチョップされた。
「いや…やっぱり申し出なくていいぞ?わざわざ仕事手伝わせてくれなんて…元々お前には仕事なんかさせたく………なんでそんな泣きそうな顔すんだよ、ったく…」
腰をかがめて私をそちらに向かせ、よしよしと頭を撫でられる。
何もなくっても、私はきっと同じように中也さんのお仕事なら手伝おうとくらいしていた。
けれど、今…この人の所属するこの組織の長を考えると、どうしても私は、のどまで“こんな所から逃げちゃいましょうよ”って出てくくるの。
いつかこの人がいい駒として扱われてしまうんじゃないか…いつか、意味もなく殺されるために駆り出されてしまうんじゃあないか…
『だ、って…中也さ、んの…っ、お手伝い、くらいしか……』
私には、それしかあげられない。
それ以外に思いつかない。
ただ、分からないだけなの。
どうしたら貴方に返せるの?
どうしたら、貴方が私にしてくれたように…
「あ〜…蝶?…おーい」
『!!…ごめ…っ「いいって、大丈夫。心配すんな」?し、心配…?』
「お前は優しい奴だからな…いいよ、そんなに思いつめなくても。俺は蝶が元気にしてくれてるだけで幸せすぎるくらいだから」
『へ……幸せ…?』
目を丸くして、彼の青い瞳とぱっちりあう。
あ…こんなにまっすぐ見てくれてる。
やっぱりこの人は、私のことちゃんと見てくれてる。
ちゃんと見て…ぶつかってきて。
「そう、幸せ。仕事手伝ってくれんのも勿論嬉しいけど、何より一緒にいれるのが一番嬉しい…お前と一緒じゃねえの?」
『!……一緒?蝶、中也さんと一緒…?』
「おう、一緒」
『…じゃあ中也さん…蝶のこと大好き?』
「ぶっ…!!!!」
何故だか吹き出された。
…もしかして引かれた?
