第22章 云いたかったこと
「あー…落ち着いた?」
『…中也さん痛いの嫌……もうここから出ちゃダメ…』
「出たところで痛くならねえよ…いや、まあ確かに居心地はいいしずっとこうしてたくもなるけどな…?」
結局中也さんに連れられて執務室まで戻ってきたら、ソファーに座らされた。
しかし、そうすると中也さんが向かいに移動してしまいそうになったため、無意識に彼の服の裾を引っ張ってしまったのである。
それに中也さんは気がついて、私の隣に座ってくれて…最終的に私は彼に微笑まれ、それに甘えきって抱きついてしまったのだ。
『…蝶、悪い子なの……中也さんのことずっと独り占めしてたいの』
「?何が悪いんだよ、それの……それなら俺も悪い奴になるぞ?」
『…どうして……?』
「分からねえか?…蝶にはまだ分からなかったか」
途端に、身体に腕を回される。
唐突に襲われた擽ったさにびっくりするも、彼の腕に捕まえられてしまえば、もうそこから逃げることは出来なくなった…逃げるつもりなんて、さらさらなかった。
『ぁ、あ…あの…ッ、中也さ…っ?』
「…こういうところは馬鹿だよなぁお前…まあ可愛らしいしいいんだが。……分からないか?なんで俺が悪い奴になるのか…分からなかったら俺がいいって言うまでこうされてろ」
それ、分からない方が寧ろいいんじゃ……なんて煩悩が出てきたのをすぐに頭の中から追い出した。
『……中也、さんは…何しても、蝶の中ではいい人なの』
「…まあいい……でもさっきお前、自分で言ったろ?自分は悪い奴なんだって」
それがどうかしたのだろうか。
こんなに重たい子…貴方も嫌でしょう?
疲れるでしょう…?
一人でまた沈んでいく。
それを知ってか知らずか、中也さんは続けた。
「俺も悪い奴なんだよ…蝶のこと独り占めしたまんま離したくねえもん」
『…………?……は…え…っ?…!!?』
理解するのに何秒かかっただろう。
「ははっ、分からなかったか?お前が想像してるよりも、ずっと俺はお前の事大事に思ってるんだぜ…なんならもう、一生このまま離してやりたくないくらいに」
『や…っ、あ、あぅ……ッ…』
恥ずかしすぎて心臓飛び出しそう。
私の胸、今、おかしいくらいにうるさいの…
気付いてないの?
大事に思ってるとか、一生…とか…
小さくなった私は、一つ、ここで遂に自覚した。
嬉しかった…単純に。
