第22章 云いたかったこと
『変な事言わないで織田作、私無理なんか…』
「…楽な生活に戸惑っているんだろう?見れば分かる…お前が俺に中原の話をしてる時、もっと幸せそうな顔してたぞ、お前」
『!!』
図星をつかれた。
それに、戸惑っているんだろうなんて言い回しをしているけれど…この人は全部知ってるから。
多分、全部見抜かれてる。
「…蝶?…何か悩んでるなら、俺に…」
『ち、中也さんのせいじゃ…ない、んです…っ、ほんとに…いつも良くしてもらってて、不満があるとかじゃなくって…!』
「……今の生活が幸せすぎて怖いんだろう?怖がりは仕方ないことだが…その分ちゃんと、人に甘えられるようにもなれよ?お前には中原も…俺もいるんだから」
『…っ、怖くない!!…お、仕事行くから……』
中也さんの手を引いて、無理矢理その場を後にした。
違うの、甘えちゃいけないの、私は。
そんな技術を身につけちゃったら、独りになった時に辛くなるだけだから。
もっともっと弱くなっちゃうから…甘えたくなっちゃうから。
「ち、蝶?…おい、蝶って」
『!ご、ごめんなさい…わ、私無理矢理…っ』
「いや、それは全然いいんだが……まだこの時間帯じゃ大した仕事でもねえし、なんなら落ち着くまで話でもしねえか?」
『…は、なし……?…中也さん、と?』
「おう、俺と」
ニカリと笑う彼の笑顔に体が少し熱くなって、無性に恥ずかしくなってきた。
俯きがちにコクリと頷くと、ぽんぽん、と頭を撫でられる。
『…っ』
考えまで、子供になってしまったのだろうか…私は。
自分の行動が、冷静になってみても理解ができない。
「!……なんだよ、珍しいじゃねえか…お前から抱きついてくるのなんか」
『……ちゅうや、さん…離れるの、やだ…ッ…』
「…おう、俺はお前の嫌がることはしねえって誓ってっからな。任せとけ!……おーおー、こすんなこすんな、目ぇ腫れるから」
『…目、なんかどうでも「お前がどっか痛くしちまってんの見ると、俺が辛くなるんだよ。覚えとけ」……なんで、中也さんが?』
率直な疑問だった。
すると彼は少し驚いてから、しゃがんで私よりも下から見上げて、こう言った。
「じゃあお前…俺と逆の立場なら、どうだ?」
『………っ、ぅ…』
「だああああっ!!?なんでもっと泣くんだよ!!?」
分からない。
なんでこんなに胸が痛いんだろう
