第22章 云いたかったこと
__横浜 ポートマフィア 拠点__
ポートマフィアの構成員になって数週間。
今日もいつものように朝が来て…いつもの生活が始まる。
「おや?蝶ちゃん、そんなところで何を……って、また“あれ”かい?」
『!太宰さん……言っちゃダメです…』
「んん?」
ニコニコしながら見られて、それにシーッ、と人差し指を口の前で立てる。
「あんな奴見てるよりも私と一緒にいた方が『中也さん見てる…』……見てるなら、なんでまたこんなストーカーチックな…?」
『…い、行ったらお仕事の邪魔になる…から』
壁に隠れて追っているのは中也さん。
この拠点の中で私は彼の直属の部下…なのだけれど、流石に仕事中にずっといられるわけではないし…立場もある。
「もう少し子供らしくなってもいいと思うのだけどね?…それにあいつ、言わないだけで気付いてるかもよ?」
『……』
言われたその瞬間のこと。
「!青鯖、手前うちの蝶に何の用だよ、あぁ?」
「失礼な、私は道に迷ってた蝶ちゃんを保護してあげようと…」
「手前に攫われんのが一番危険なんだよ!!!…蝶、んなとこ隠れてないでこっち来い、バカがうつる」
馬鹿は移りません。
一瞬開きかけた口を全力で閉じておいた。
口は災いの元っていうし。
『…行っていい…んですか?今……』
「あ?今も何も、いつでもいればいいだろ、いたい時に…ってこれ毎日言ってねえか俺?」
『……ごめんなさ「あああ謝んな謝んな、何も悪いことしてねえからお前は!?」…』
小走りで中也さんの元に行けば、さりげなく手がこちらに伸ばされる。
それに素直に手を添えれば、彼に握られる。
「ちぇっ、まーた蛞蝓に蝶ちゃんとられた」
「言ってろ……蝶、お前まだ朝食摂ってないんだから。行くぞ」
『え゛っ、ご飯食べ「るんだよ、当たり前だろ」…』
「…食わねえってんなら昼食と夕食を二倍に『た、食べます…っ』よし、行くぞ。今日は…卵とベーコンだ」
『……お肉無「俺が焼いたやつな」!!た、食べ…ます…!!』
わかりやすい奴、と喉を鳴らして笑いながら、中也さんは私の頭を撫でる。
最近よくこうしてくれるようになった…誕生日、もう終わったはずなのに。
「俺のとこ、来るならいつでも遠慮せず来いよ……迷惑じゃねえから」
『…はい……?』
「ぷっ…なんで疑問形なんだよそこで……面白ぇ奴」
