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第22章 云いたかったこと


「中原さん…なんで、蝶ちゃんに……」

真っ先に俺に口を開いたのは、意識を取り戻した茅野だった。
俺の腕の中で規則正しく呼吸を繰り返す蝶を横抱きにして立ち上がり、そちらを向く。

「…蝶が、隠しているのも辛いと…言ってきてな。頼まれたんだ、話してくれって…今から一度校舎に戻ろう、夜は冷える」

袖の無い格好をしている茅野に蝶の上着を着せ、そのまま踵を返してE組校舎へと歩いていく。

「冷えるって…こ、これ蝶ちゃん…の…」

言われるまでもなく蝶を自身の上着で包んで、そのまま歩く。

「……こいつの体を冷やしてやりたくねえ。…怖がりなんだよ、手前らが想像してるよりもずっと」

「「「!!!」」」

こういう時に蝶が起きていれば、全員まとめて移動することだって容易かっただろう……今は能力も使えなかったか。

「…………こうして見てりゃ、普通の子供なのにな…なんでお前、肝心なところでいつも最初に…俺のとこに来てくれねえんだよ…」

一人、吐けない弱音をポツリと吐いた。

さっきだって…どうして俺より、あいつのところに突っ込んでいったんだよ。
今日だって、なんで太宰の…立原のところに。

一年前だって、なんで太宰のところに…

自分が一番想われていることが分かっているから…腕の中の少女が考えてしまうことが痛いくらいに分かるから、責められない。

しかし、考えずにはいられないのだ。
どうしていつもお前は……

「……初めて来たのが、俺のとこなら…っ…」

「…」

隣を歩いていたイリーナは何も言ってはこなかった。

それと同じように、他の奴らも。

いつも考える…この世界に来た時、最初に出逢っていたのが俺ならば、と。
それなら、こんなにも生きづらい世界じゃなかったはずだ…こんなにも、お前が思うほどに、怖い世界じゃなかったはずだ。

蝶の体を抱きながら、考えていただけですぐにE組の校舎に着いた。





蝶を保健室の寝台に横にならせてから、そのままイリーナに蝶を任せて教室に入る。
流石に本当に気温も低いから、暖房機器も起動させて。

「…手前ら、蝶の事なんだが………話しきったところで、そのあとに仲良くしろとも言わねえ。しなかったところで何も報復はしない…ただ、聞いてやってほしい。…全部」

「……全員聞くよ、ちゃんと」

カルマの声に、全員の目を見て話し始めた。
全て…全部。
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