第22章 云いたかったこと
「ほう、これはこれは…やはり化け物を止めるにはモンスターの力か…」
『!!…っ、!』
「……ッ、は…相変わらず俺の前じゃあ危ない奴だ…」
思わずそいつに入れた蹴り。
何本かは折ったような感触があった。
そして殺せんせーの触手からも抜け出して、すぐに中也の状態を確認する。
私の体質が少しだけ移っていたおかげなのか、本当に意識を失っているだけのよう。
他に異常がないことを確認してから、すぐに自分に、彼の状態を移し替えた。
胸が少しチクリと痛んだが、私にそれは通用しない。
「……ッ、…あ…?」
『…良かっ……ッ、え…?』
中也が意識を取り戻したことに安堵したのも束の間…私の口に、血液が逆流してきた。
…変な成分入ってたな、これは。
すぐさま膝をつくと、心底楽しそうに笑い声をあげる柳沢。
「蝶!!?血が…!!」
「赤羽業…お前は確か、こいつの親友だとか……本当にこいつの事を分かった上でそんなことを言えたのか?なあ?」
白装束を脱ぐような形で氷を破壊され、かと思えば壁まで溶けていく。
「はは、驚いた顔をしてくれる…俺にその顔を向けるのは何度目だ?……気持ちいいだろう、新作の薬は…殺傷性に少し欠けるが、貴様は暫く能力を使えないはずだぞ」
言われた通りだ…能力が使えない。
…なんで、私は中也の状態を私自身に移動させた?
目の前で高笑いをあげている、こいつに移してやれば…
「馬鹿な奴だ、そんなにその男の言いつけを守ろうとして…とっとと殺していれば良かったものを」
『……め、て…』
「人間の真似事なんかやめてとっとと楽になればよかったものを!…そんなに大事だったのか?こいつらとの友情ごっこに、そのオトコとの恋人ごっこが!!」
『め、てって……言って……ッ』
あいつの目の前で、もう何回目なのかも分からないような涙を流しかけた。
そんな時だった。
柳沢の体が地面に突然叩きつけられて…私の体が抱きとめられる。
「……手前か…よぉ、…何年ぶりだ?おい」
「っ、回復、が…早いじゃあないか……ッが…っ!!!」
吐血するほど押さえつけられるそいつ。
犯人は一人しかいない。
「…手前は死ぬような価値もねえよ…どの口がほざいてやがる、頭狂った化け物が」
低めの声、それと私の体に入る力。
私がこれまでに感じたことのないほどの殺気。
キレてる…?
