第20章 家族というもの
『…耐えられなかったんだもん、自分が全部さらけ出してたせいで。仕方ないでしょ?今まで何回もしてきた事だし…結局一回も死ねてないけどさぁ』
「お前、それでさっき…トウェインに?」
『………寂しいもん、独りになるの。あんなに私の事一途に思ってくれてる人なんかなら尚更』
経験したことがあるから、余計に。
織田作の時だってそうだった。
経験があったから。
私が困らないようにって、好意を寄せているのを悟らせないようにするくせに。
別れる時になって、私に思い知らせてくるの。
恋心なんてものを知るのはたまにしかなかったことだったけれど、私を想ってくれてた人と、どれだけ別れなければならなかったか。
一番最初に馬鹿なことをしたのがいけなかった…最初の世界で、自分の身体を理解せずに人と関わりすぎたのがいけなかった。
「……例えば俺が死んだら、お前どう思う?」
心臓が握り潰されるような感覚に陥った。
嫌な想像が頭の中を駆け巡って…
自分が何度も経験してきたからこそ分かる、死の感覚。
あれを、立原が?
一回きりの人生の、立原が?
言葉にされて、どうにも制御が効かなくなる。
『や、めて…も、やだ……いや…』
「!…………悪い、嫌な事聞いて」
『…立原も、やだよ…皆、置いてっちゃうの……っ、皆、私だけ残して…無責任だよ、散々深入りしてきておいて先に…』
「蝶!!」
『!!…ごめん…なさい………』
「…いや、聞いた俺が拙かった。……けどありがとな、そんな風に大事に思ってくれててよ」
俯いて唇を噛みしめる私の髪に柔らかく触れる立原。
泣いたら、ダメ…全部溢れちゃう気がするから。
多分、これまでの世界で私に関わってきた人みんな………みんな、先に死んじゃうから。
死んじゃってるから。
『思ってないしっ、立原なんか…!』
「…泣きそうな顔してたら説得力ねえって」
『泣いてないもん…立原なんか…立、原なんか……』
「……おう、本家立原様だぞ。立原二号の分までお前の傍にいてやんよ、大親友!」
立原“二号”なんて久しぶりに聞いた。
それも本人が認めてそれを口にするなんて。
『…二号さん別に死んでないんですけど?本家さん』
「おう、知ってる」
『……私の事もう嫌ってないの…?』
「嫌ってたらわざわざ餓鬼の学校行事になんざ行かねえよ、馬鹿」
