第20章 家族というもの
「なあ蝶、さっき二人が言ってた織田って…ポートマフィアの人間の事か?」
『…そうね、すっごく強い人。異能力は持っていたけれど、それが無くても全然強い…立原なんか足元にも及ばないくらい』
「てめぇな…」
『嘘嘘、立原君もちゃんとお強いですわよ。…なのに本人の意思で、階級は最下級構成員…それも仕事で人は殺さない。変わってるでしょ?』
くすくす笑いながら話している場所はくぬぎカフェ。
磯貝君にいつものストレートティーを出してもらって、軽くお茶をしながら立原といる。
どうせ私が椚ヶ丘でいる場所なんてここくらいしかないんだし、携帯を使わなくてもあの人なら来れるでしょ。
「……聞いたことはある、中原さんから。…殉職したんだろ?そいつ」
『……うん、四年半前に』
「お前が相当懐いてた相手だって…下手すりゃ自分以上に懐いてたんじゃねえかって、幹部が言ってたぞ」
『まあ、織田作は話の分かる人だったしね…何より相当勘も鋭い人だったし、多分子供が好きだったんだと思うし』
何より、恐らく私の事をただの子供とは思わずに見てくれていた人だった。
私が、中身は子供なんかじゃないんだって。
多分、出会った時にお互い分かってた…不思議な人だなって事くらいは。
「けどさっきのあの男の言い方じゃあ、まるでお前が言い寄られてたみてぇな…」
『……違うの、多分私が困るだろうからって、隠し通そうとされてたんだけど………自分が死んだ後に私にそんな事伝えるんだもん、意地悪だよ本当』
「は?死んだ後にって…どうやって……」
『…手紙、あって……それで』
アイスティーを口に含んでちらりと向かいに座る立原に目を向けると、口を開けて動揺したように固まっていた。
「うちみてえな組織じゃザラにあるっちゃあるが…お前、それ平気だったのかよ」
『……中也がいなかったら多分死んでる。とっくに…それこそ立原なんかと出会うもっと前に。自殺しようとしたら止められて、怒られて……中也が泣いてるの見て、ああ、これはしちゃいけないなって気付いた』
それでやめた。
けど、やめたらやめたでなんだか生きてる心地もしなくって。
『それで太宰さんもいなくなっちゃってたし、太宰さんの事なんか中也に話せるわけないし…ぼーっとしてたら、いつの間にか捕まっちゃってた』
「…なんで、自殺なんか……」
分かってんだろ…?
