第20章 家族というもの
「手前にそれを話すメリットは?少なくとも俺は、この話は墓まで持っていくつもりなんだが……首領にも話はしてねえしな」
「おや、あの君が森さんにもかい?」
「ああ、一度問い詰められたがそれでも断った。力づくでもってんなら組織を潰してでも言わねえっつってな」
「……メリットは、そうだねぇ…彼女が君のところにいられなくなった時に、先程のように彼女のストッパーとなれる人物が必要なんじゃないかと思って」
これでも、織田作の後継人なのだよ、一応。
頼まれていなくとも、勿論私はいつでもあの子の味方でいたいと思う…しかし、それ以上に、織田作本人から直々に頼まれているのだから。
「…全部は言わねえぞ、流石に問題になっちまうような案件も混ざってる…………気に食わねえがあいつは中々手前に信頼を寄せてるところはあるしな」
「おや、やけに素直だね。もう少し渋られるかと思っていたのに」
「手前が織田の名前を出すからだろうが…まあ他に言うとしても手前くらいなもんだろうとは思ってはいた。……手前が他言しようとでもすれば、俺は蝶が泣こうと手前の喉笛を掻き切るからな」
「ふふ、上等さ。私の彼女への愛を舐めないでくれたまえよ」
「気持ち悪ぃ言い方すんじゃねえよこの木偶が」
周りに警戒しつつ口を開いた中也。
中也の口から発せられた、彼女、白石蝶……もとい、白石澪ちゃんとの約束の事。
約束と言うには重い話で、口約束なんかでいいのかと思ってしまうような内容だったのだけれど……それをまだ約束の段階でとどめておける彼女を、私は心の底から尊敬した。
どうして、とっとと自分のものにしてしまわなかったんだ。
どうして、まだそんな優しい人間でいられるんだあの子は。
「生命の源を、分けるって…あれ、けど待って。その話……君のセーブポイントはどこになる予定なんだい?」
「ま、なるようにしてくれんだろ。あいつは今、また前よりぐんと強くなってっからな……能力だって、未知数なもんになっちまった」
「例の年齢の話だね?…それで君、本気で飲んだのかいその約束?もし地球ごと…」
「ならねえよ、ふざけた事抜かしてんな、殺すぞ手前…まあこんな地球に思い入れも何もありはしねえが」
どうやらこいつは、本当に彼女のこととなると頭がおかしくなるらしい。
生命の契約を結ぶだなんて…どんな覚悟を持っているんだ。
