第20章 家族というもの

「それで、君達これからどうするの？私、久しぶりだから蝶ちゃんと色々と語り合いたかったのだけれど」

「手前が蝶と何を語り合うんだよ、“俺の”蝶とな、に、を」

『あら、中也ってば大胆…今すぐ結婚したいだなんて…』

「「言ってねえよ！！」」

中也と立原に揃って突っ込まれた。
してくれたっていいのに、中也のケチ。

「君の蝶ちゃんじゃない、私の蝶ちゃんだ。お兄ちゃんのところにおいで蝶ちゃん！！！」

「誰が兄だこの変態野郎が！！」

「ふっ、私しかいないだろう？素晴らしい兄だ…地球上にこんなにも素晴らしい生き物がいると思うかい？それにさっきトウェイン君にはハグも許していたじゃあないか！」

「あいつは事情が事情だし蝶が世話にもなってたから仕方なくだ！！昼間はど突き飛ばしたわ！！」

そういえば肘入れられたな…頭に。

お兄ちゃんなら織田作の方が……なんて言いかけた口を閉じた。
やめようやっぱり、私なんかより太宰さんの方がよっぽど苦しんでたはずだ。

……最期に話した時に、ちゃんと私が分かってあげていれば。
私を澪と呼んだ時に…作之助と呼んでほしいと言っていたあの時に。

私に今くらいの鋭さがあれば…もっと私が人と沢山関わってきていれば。

もっと早くに分かっていたかもしれなかったのに。

「…私は織田作の後継人さ！！さあさあ蝶ちゃん、織田作だと思って抱きつきにきたまえ久しぶりに！！」

『私がいつ貴方に抱きつきにいったんですか』

「織田作には抱きつきにいったことはあっただろう？」

『……中也の前でそういう言い方するの、嫌がらせにも程がありますよ』

「でも蝶ちゃん、気付いてたんでしょ？」

ﾋﾟｸ､と太宰さんの言葉に反応する。
この人…いつから？

「君達の関係なら、織田作も隠そうとはしていたのだろうけれど流石に大人になれば私にも分かるさ」

「…太宰」

「君は当時まだ気付いてはいなかったのかもしれないけれど…」

「太宰！！………やめてやれ、それは。言っちゃいけねえもんがあるだろ」

「…………残念、君が嫌がるだろうと思ってたのに。もしかして君の方が私よりも先に気付いていたのかい？」

言わせちゃいけない気がする。
中也の前じゃ、言わせちゃいけない。
そんな気が。

私が悪いわけでも、彼が悪いわけでもない。
けど

「織田作が、蝶ちゃんの事好きだったって」