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第20章 家族というもの


私に顔を見せないようにか、私の頭を撫でながら、涙声になって言うトウェインさん。
前は、泣いてなかったのに。

モビーディックの中で彼と別れを告げたあの時、この人が言っていたのに。

『…偉いねトウェインさん、ちゃんと一人で泣かないの。いいよ、泣きたくなったら貸したげるから、私のとこ』

よしよし、となんとか背中に腕を回して、彼がしてくれるようにまた撫でる。

「うん…情けないかも、しれないけど……っ、僕、君に出会えてよかったよ…!」

『!…………私、も…よかった…』

貴方のような人と出会えて。
最初はなんなんだって思ってたし、邪険にしてたし警戒もしてたけど。

いつの間にか私の中でも大きな存在になって、頼れる人になっちゃって。

あーあ、考えないようにしてたのに、人と別れる時って何でこんなに嫌なことばっかり考えちゃうんだろう。
もらい泣きしちゃうじゃない。

「…蝶ちゃん、大丈夫なんでしょ……言ったじゃん、いつでも会いに来れるって」

『う、ん…そう…だけど……ッ』

そうじゃない。
限度がある。

出会いたくなんてなかった、これだから人と関わるのは嫌なのに。

前に散々、懲りたはずだったのに。

だって、皆私をおいて行っちゃうんだもの。
私をおいて、先に皆会えなくなっていっちゃうんだもの。

これ以上、大好きな人達と離れたくなんてないのに。

また、私の事を好きだって言ってくれた人がいなくなるのは嫌なのに。

「もう、泣かないでよ蝶ちゃんまで…ほら、僕だよ?このトウェイン様が蝶ちゃんが会いたい時に会えなくなんてなると思うかい?」

『…っ……会ってくれ、なきゃ…嫌い、ですから…』

「これは会わなきゃダメだなぁ…うん、いつでも待ってるよ。中原君のとこが嫌になったらいつでも僕に乗り換えちゃってね♡」

『ん…』

なんで私はこんななんだろう。
普通の寿命なら、こんな思いはしなくてもいいはずなのに。

死ねる身体なら…死ねてしまえるのなら、こんなに別れを惜しまなくてもいいはずなのに。

生き続けられてしまうからこそ、人と別れるのが寂しくて寂しくてどうしようもない。

「じゃ、今日のところはそろそろ行くね。飛行機に乗り遅れちゃうし」

『……じゃあね…また、ね?』

「!うん、またね…!」

私に送ってと言わなかったのは、多分彼もこれ以上引きずりたくなかったから。
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