第20章 家族というもの
「蝶?」
『中也…お話終わった?……変な事言ってないよね?渚君のお母さんに迷惑かけてないよね??』
「ああ、そりゃ……どっちかっていうと太宰の野郎の方が何かやらかしそうだろ。…人間的に」
『……うん?…抱っこ』
立原を弄り続けていたところに、突然違う方へ行ってしまった中也が帰ってきた。
それに安心して、いつもの中也が戻ってきてくれたのにホッとして。
渚君のお母さんに何か言われてないだろうか。
私の事で迷惑かけてないだろうか…私のせいで、変な目で見られたりしなかっただろうか。
中也が私から離れる時に少し背中を撫でられて、何も言われなかったけど待っておけと伝えられたということが分かった。
多分、私があまり普通の大人と関わりたくないことを見越してのことだろう。
特に、母親だなんていう部類の人間とは。
「あ?お前、今の今まで立原と仲良くやってたんじゃねえのかよ?」
なんて言いつつも、耳を赤く染めて少し腰を屈め、腕を回してよしよししてくれる中也。
最近、私が誤解するのを懸念してか先に行動に移してくれるようになった気がする。
『ッ、…あの……い、いきなりは近…ぃ……っ』
のだけれど。
確かに自分から言ったけれど。
それでも恥ずかしいものは恥ずかしい、相手が中也なら尚更のこと。
「お前から行ってきたのにそれはねえだろ、我慢しろ…それともなんだ?俺にされんのは嫌ですってか?」
『!!違っ…』
「冗談、分かってる……いい子にして待ってたな。大丈夫だ、お前が心配するような事はねえよ…寧ろあの人、お前のこと普通に見てたぞ。これからも潮田の事よろしくって」
『へ……あ、…は、い……?』
「……よろしく友達やってくれってよ」
理解出来ていなかった私に分かりやすいように中也からもう一度伝えられる。
それに何かがこみ上げてきて、嬉しいのかなんなのか分からない。
いや、要するにまず嬉しいのだ私は。
人に認められることが。
わざとそんな言い方をしたのだろうけれど、人から普通に見てもらえることが。
横目に見てみると太宰さんが渚君のお母さんと話をしていて、その様子から分かった。
多分、またこっそり私の事助けてくれたんだって。
「……なんだ?お前は太宰の方が気になりますってか…俺の目の前でいい度胸だな?妬くぞ」
『!違いますもん…ッ』
「ぷっ……知ってる」
