第11章 縁というもの
「それは初耳だな。二十歳くらいの時に何かあったか?」
『ううん。でも、元々普通の身体だったのが六歳の時にこうなって、寿命の長い人達が住んでた世界に適応し始めちゃったんだよ。何百年もあれば一応ちゃんと成長はしていくんだけど……まあ私、どこの世界でも死んできてるから』
「お前くらいに強い奴が?」
『うん、自殺だからね』
中也さんは予想をしていたのだろうか。
いや、前に話した事があったからか。
何回も死ぬ方法を模索し続けてた時期があったなんてことは、中也さんはもう分かってるから。
表情を変えずにいてくれる…この方が私も話しやすい。
『色んな世界にいって色んな死に方を試して…それとほら、違う世界に行くための条件があるって前言ったでしょう?』
「ああ、条件付きでならって言ってたな」
『そう、その条件っていうのが、新しい世界に行くのと同時に自分の身体をリセットする事なの』
「……成程、それで子供からまた始めるわけか」
要するに一度死んで肉体を再構築するという事。
世界を超えるための特別な扉は、通り抜けたら死んじゃうようになってるから。
『うん…だからね、見た目がこんななのもあって、本当に大人になれた事ってまだ無いんだ。中也さんにどんどん離されていっちゃうなぁ…』
「……お前が生きていてくれさえすりゃ、いつか大人になったお前も見れるんだろ?楽しみ残しておいてくれよ、俺のために」
『!!…仕方ないですね。遅いって駄々こねないでくださいよ?』
「言ってろ、有り得ねえ話だろうから」
なんでこうもさらっと言葉を返せるんだろう、この人は。
死ねない事を楽しむかのような発言ばかり…ああそうか、独りじゃないって、そういう事。
大事な人とずっとずっと一緒にいられたらって、普通の人達は思うもんね。
うん、独りだったら辛いだけだけど、そういう風に考えたら確かに幸せな話だ。
まさかこんな人と出逢うような日が来るとは思ってもみなかったのだけれど。
『あ、そういえば中也さんリングするのって、どこにするの?』
「仕事ん時は流石に素手の方になるだろうが、普段は…手袋の上からするっつうのも変な話だな確かに」
外に出る時に手袋外してみたらいいのに。
呟きに、中也さんは外す?と聞き返す。
『持ち歩いてたらいいじゃん…私以外の誰かに触れないでしょ』
「!…言うじゃねえか」
