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第11章 縁というもの


『なっさけない…』

自分のデスクに突っ伏してボソリと呟く。
社長は出張中でいないし、事務員さんは定時で帰っちゃったし。

国木田さんはまあ依頼を受けに外…現在探偵社事務所で一人です。

さっきからずっとこのまま動いてない。
ああ、私このまま日光にやられてからからに干からびちゃうのかな、干物になって中也さんに食べられるの……それもいいかもしれない。

こんな具合に頭がだいぶ危ないことになっております。

ていうかそもそも、太宰さんが変な事を言い始めるからじゃあないか。
織田作さんが一番酷かったとか聞いてないし。
私の中じゃああの人か安吾さんあたりが一番の常識人なのに。

親バカ…親バカなぁ。

考えれば考えるほど想像がつかない。
そして想像すれば想像するほどに、考えてはいけないことを私の頭は考え始める。

もし、今織田作さんが生きてたら。
もし、彼の肉体がある内に私が駆けつけることが出来ていたならば。

『四人相手とか大丈夫かな私…』

気力が持たずに途中で殺しに行ったりしそう。
考えれば考えるほどに腹立たしい話だ。

殺せば脅威は消え去るのに、私ならそれは容易く出来るのに。
無闇に人を殺さない、それを約束させるだけ約束させて、結局一人で死んじゃうんだもん。

せめて一回くらいその馬鹿な織田作さんを見たかった。
一回くらい、それくらいになった織田作さんに甘えてみたかった……もっと素直になってればよかった。

『…………死んだ人に会いたいとか、今更じゃん、私』

ポツリ、呟いてから、頭の中には数えきれないくらいの人達の顔が思い浮かぶ。
見て見ぬふりして色んな世界から逃げ続けた。
人と関わったら、逃げてきた。

大切な人達が生きてる内に、逃げてきた。

本当に今更、本当に情けない。
私はなんで死ねないのだろう…心当たりはあるにしろ、それを壊す方法が分からない。

私はなんで、大好きだった人達がいなくなっても生き続けなければならなかったのだろう。
……中也さんに出逢うためだったと考えればそんなに幸せなことはないか。

『…そろそろ慣れろっての、馬鹿』

「だぁれが馬鹿だって?」

『え?今もう受付終了して……えっ』

声で気づけないくらいには考え込んでた。

地獄耳…こういう時だけ、いつの間にかそこにいる。

「おいこら、なにしょげてやがんだよ。ちょっと付き合え」
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