第11章 縁というもの
なだれ込むように確認しようと覗き込む敦君。
乱歩さんも確認してから、顔をムスッとさせて頬杖をつく。
「あの子は馬鹿だ。僕が天才だと認めるのにも関わらず大馬鹿者だ」
「まあまあ乱歩さん、蝶ちゃんの事大好きなのは分かりますけど、あの子はあれでいて甘えられない質なんですって」
「だから馬鹿なんだよ、なんで分からないのかなぁ?一人で解決しようとなんてしなくても、これだけ周りに人がいるのにさぁ」
乱歩さんの仰る事は最もだ。
が、しかし今回、彼女が焦る理由もまあ分かる。
というか、嫌でも分かってしまう。
「……まあ、今回は相手が相手ですからねえ」
相手?と首を傾げる敦君の方を向いて、昨日調べたばかりの情報を口にする。
「蝶ちゃんの命…とまではいかないけど、足止めを狙ってる奴。相当な腕らしいよ、世界最高峰の殺し屋……の弟子」
「!!そんな奴がどうして蝶ちゃんを!!?」
「蝶ちゃんを足止めしなくちゃ、蝶ちゃんのクラスの子達を思うように操れないだろうからね。殺せんせーの賞金を狙う輩の一人なんだから当然だろう」
「そりゃあ、とんだ学生生活をプレゼントしちまったもんだ…」
しかし有難かったのは、相手は異能力者ではないということだ。
こちらは与謝野先生のおかげで何があろうと全開できる。
蝶ちゃんが能力を下手にバラすような事は絶対にしないだろうし、策さえ練らせなければ本人的には勝てるというし。
「与謝野先生のおかげで、恐らく蝶ちゃん以外は攻撃されたり殺されたりはしないでしょうけど……まあ、蝶ちゃん自身は嫌な予感がするんでしょうね。ずっとぴりぴりしてますよ、相変わらず隠すのが上手い」
「隠すのが上手いって、あのいつもの感じは演技…?」
「そうだよ敦君、いいところに気が付いたね。そこが天才的なのと同時に大馬鹿なとこなんだよ蝶ちゃんの……ああやって隠すから…隠せちゃうから、誰も気付けない事がおおいんだ」
「なんて甘え下手な…」
織田作はそこまでは言っててくれなかったからなあ。
彼からあの子に言い聞かせてくれていれば、それを律儀に守って甘えるよう育っていたかもしれないのに。
「だから馬鹿なんだってば。分かる?そこの馬鹿代表」
「代表…」
「あー……どうしよっかなあ、蝶ちゃんが弱ってる時にいらないこと言っちゃった。こういう時は大概あの蛞蝓を呼べば全部丸く……」
