第11章 縁というもの
「太宰は花に詳しいのかい?妾にはさっぱりなんだが」
与謝野先生だけでなく、皆花にはそこまで詳しくないらしい。
私はマフィア時代に蝶ちゃんが詳しいということを知って、それから興味を持って少し勉強したくらいだったのだけれど……まあずっとずっと生きてきてる蝶ちゃんからしてみれば、嫌でも博識になってしまったようなものなのだろうけれど。
「花言葉ってあるじゃないですか……あれ、全く違うような意味のものを二つ持ってる花なんかもあるんですよ」
乱歩さんもそこまでは詳しくないようで、首を傾げている。
「中也から逃げるように私の親友の死んだ場所に行って、チグリジアなんて花を置いて縋り付きたくなる程に焦ってたんだろうね。今はちょっとマシかなと思ったりもしたけど、多分あれじゃあ無意識に弱っちゃってるだろうし」
彼女が織田作の死んだあの土地を買い取っていた事は知っていた。
まさかと思って足を運んでみたら、驚いた事に立原君まで連れて来ていた。
誰とも行かないのに、あんな場所。
それにあんなに気配に敏感な蝶ちゃんが、私がいるのに気付きもしない…気付けないほどに弱っている時にしか、あの場所には行かない。
「あ、あった。チグリジアの花言葉………私を愛してください?」
え、でも中原さんとか蝶ちゃんにベタ惚れだよね。
他の男の人に向けて蝶がそんなものを置いていくかい?
そんな声が聞こえるものの、乱歩さんは何かに気付いたのだろうか。
首を傾げるのをやめていた。
「私はチグリジアを見た時に絶句するしかなかったですね、中也の奴、何やってるんだよ…なんで気付いてやれなかったんだよ自分って」
「え?でも愛してないことないはずじゃ…さっきだって指輪の話なんてしてましたし」
「そこは問題じゃないよ…まあ、今も多分意識してないだけで相当気を張っているんだろうけれど。そうじゃなくて、私がさっき言っただろう?二つの違う意味の花言葉を持つ花もあるって」
ああ、そっかと谷崎君はまた端末の液晶を見る。
スクロールをしたのか別のページを開いたのかは分からない。
けれど、彼は目を見開いて…私がそれを見た時と同じような顔をして、固まった。
「…………蝶ちゃんは、これを意図して…?」
「そうまでして求めてたんだろうねえ」
「なんだい、二人してさっきか…は?意図してって……」
____私を助けて下さい
