第11章 縁というもの
先程までの空気と一変、静寂があたりを包み込む。
特段織田作の話をしようと思うことはまあないけれど、蝶ちゃんの元に今誰かをすぐに行かせるのはやめておいた方がいいだろうし。
「亡くなったって……!そうか、ポートマフィア…」
「色々あってね。異能力者の率いる敵組織を一人で壊滅させて、そのまま自分も…本当に馬鹿だったよ。でもいい奴だった、私にとっては勿論……蝶ちゃんには特に」
「兄バカだとか言ってたような気がするが、そいつの影響を受けたのがあんたらなんだってんなら、大元はかなりの溺愛っぷりだったんだろう?」
与謝野先生からの質問に、いいえと返す。
確かに溺愛っぷりは凄かった…凄かったけど、あれはまあ蝶ちゃんの前以外での話だったらしい。
蝶ちゃんと二人でいた事なんて私が知らない時だっていっぱいあっただろうし、それで先程余計な事を言ってしまったのだ。
「あの子の前ではそういう素振りは見せてなかったみたいですから……はは、さっきかなり混乱させちゃったみたいですけど。あの顔は多分、何か溜めてるのを隠してる反応ですね。本家に縋りたくなるくらいの何かがあった可能性があります、あれは」
「!溜めてる……?指輪の話もあったし、幸せそうだった気もするんだが」
「いや、与謝野先生。蝶ちゃんが誰かに狙われてるって話は知ってると思うんだけどさあ?彼女の事を狙ってる輩が中々厄介な奴らしくてね…ポートマフィアの方でも何やら居心地悪いみたいだし、何か嫌な予感でも感じてるのかも」
乱歩さんの推測は正しい。
聞いた話じゃあ元暗殺者の怪しい秘書が三人。
そこからたどっていって一つの結論に結び付きはしたのだけれど、何やら晴れ晴れとしない顔だった。
相当嫌なものを感じていたのだろう。
中也が蝶ちゃんを探しにわざわざ探偵社まで走って来たのだって普通に考えればおかしな話だったわけだし……何より、あの子が人を連れて“あの場所”を訪れていたのを私は見に行ったのだから。
「この前中也が蝶ちゃんを探しに来た時に、私が心当たりを見に行ったらそこに蝶ちゃんがいたから無事だと言いましたよね?その心当たりっていうのが、まあ言ってしまえば私の親友の死んだ場所なんですよ」
「そんな所に…?」
「はい、それも花まで置かれていましたからね。かなり切羽詰まった状況だったんでしょう……________チグリジアなんて」
