第11章 縁というもの
突然の声色の変わりように呆れたようにすればいいじゃないかいと返された。
そろそろ慣れてるけど。
「ふふふ、皆蝶ちゃんはあのチビとずっとあんな調子で仲が良かったと思ってるだろうから先に話に出しちゃうね?あの子、中也に拾われたての頃、中也と目も合わせなかったような子なんだよ」
私の一言に、その場の全員が目を見開いてこちらに顔を向けた。
信じられないと声にまで出ている。
私からしてみれば、恋仲にまで発展してしまったことの方が信じられないものだ。
「め、目も合わせなかったって…会話は?」
「必要最低限のものくらいだったね。ほら、あいつ蝶ちゃんの事育て始めるまでもっと荒かったから」
今となっては蝶ちゃんにはあんなだし、他にもやけに礼儀正しく律儀になったり、敵をあまり作らないようになったり…ある意味気持ち悪い変化だけれど。
「怖かったんだろう、いきなり自分を連れ出していった人間が強い口調で話しかけてきて、目的も何も分からず突然自分に普通の生活を提供し始めるんだから」
「強い……まあ確かに荒いのは荒いですけど、でも蝶ちゃんには割と甘くないですか?」
「それはまあ、あの子を育て始めてからあいつが変わっていったからさ。最初なんか小さい女の子に対して毎度の如く手前呼びだし、ちゃんとした名前も無かったからそれ以外に呼び方も無くて」
ああそうだ、それをちゃんとまだただの餓鬼だった中也に注意したのも織田作だった。
それが怖いんだと、荒い呼び方に怯んでしまうんだということを聞き出したのも…零という通り名が嫌いで、特に生きる事に執着する必要性を何も感じていなかったのだと本人から直接聞いたのも、彼だった。
「それでまあなんやかんや色々とあって、チビのくせして名前付けちゃえばいいんじゃないかなんて思いついたんだよ。考えられないでしょ?あいつああ見えて多分、実はロマンチストだよ絶対」
「わ、妾はてっきり名前を付けてもらったからそれに心を開いてついて行ったのかとばかり…」
「無い無い!彼女は元々、優しく親身になってくれて紳士的な男性がタイプだしね。私だって当時は十四くらいだったから、ただの餓鬼にしか見てもらえなくて話もろくにしてもらえなかったさ」
「そんな時からの付き合い……蝶ちゃんって本当に大人なんだ」
「最近ようやく子供になる事を覚えて大人になりかけてる、が正しいね」
