第15章 タイガーリリー
「好きなやつ…」
呟いたその顔は、真っ赤で…
驚きと戸惑いの混じった目で、俺を見ていた。
「そ、そんなの居ないよ…」
目を逸らして、立ちあがった。
「ちょっと待てよ」
思わず手首を掴んで引き寄せた。
「うわっ…」
突然のことで、ニノの身体がソファに倒れ込んだ。
「なんであんなことしたんだよ」
「だから…俺じゃないっ…」
「でも彼女はやってないって言ってた。だったら…お前しかいないんじゃないの?」
「なんでそんなことする必要があるんだよ!?俺が!」
そうだよな…それがわからないんだ…
”彼には…他に好きな人が居たんだと思います”
彼女にはそれがわかっていた…
「もしかして…好きな人のこと、バレそうになったとか…?」
「え…?」
「だから、彼女になすりつけて無理やり別れたとか…?」
「な、何言ってんだよ…」
誰もいない楽屋で、ニノの声が弱々しく響いた。
偶然なのか何なのか…
今、俺達はふたりきりだった。
「なあ…ニノ…」
「なんだよ…翔ちゃんには関係ないだろ…?」
俺の手を振り払うと、ニノはまた立ちあがった。
楽屋を出ていこうとする。
「待てって…!」