第15章 タイガーリリー
車椅子バスケのドラマのスタジオもロケも終わり、もうすぐツアーが始まろうとしていた。
年末の特番の撮影や、生放送の音楽番組の打ち合わせや企画など、レギュラー以外の仕事もどんどん増えてくる。
家と現場を行ったり来たりして、休まならない日々。
俺と和也はそれでも時間のある時は一緒にいた。
消えてしまいそうな雰囲気はそのままで…
ある日の夜、書斎で取材メモをまとめていた。
例の如くデスクライトだけで充分だったから、真っ暗な室内でパソコンを開いて作業してた。
和也はもうベッドで先に休んでいた。
キーボードを打つ指を動かしていると、眠気が襲ってきたので、やっぱりコーヒーを淹れて戻った。
コーヒーを飲みながらキーを打ち込んでいると、あの時のことが思い出された。
なんで…7月から8月の記憶がないんだろう。
あの後は、定期的に病院に行って検査をしているけど、脳には異常はない。
今年の7月までの和也の記憶を取り戻したと報告すると、では残りももうすぐですよと励まされた。
ただ、脳の働きはわからないことが多いから、もしかしたら欠損した記憶は戻らないかもしれないと、そうも言われた。
なぜその部分だけ、戻らないんだろう。